中古住宅の耐震性の3つチェックポイント

中古住宅を買おうと考えている人から多い質問に関して「中古住宅の寿命(建物はあと何年もつか?)」を書きました。その話の続きで、中古住宅を購入する人が知っておくべき耐震性のチェックポイントについてお伝えします。

耐震性は、もともとの設計で有するものと新築後の劣化状況、そして施工ミスの有無の3点を確認しなければなりません。

 

耐震性に関する3つのチェックポイント

  • 設計上の耐震性
  • 劣化状況
  • 施工ミスの有無(施工品質)

新築時点で十分な耐震性を有していても、その後の劣化により耐震性は劣っていくということです。たとえば、柱や筋交いが腐ってしまえば、設計上の耐震性をキープできていないのは明らかですね。

また、せっかく耐震性能の高い設計していても、新築工事で施工ミスがあれば完成時点にして設計上の耐震性をもっていないこともあるのです。たとえば、必要な金物を取り付けていなかったり、金物の取り付け方にミスがあったりということです。

ところで、認定長期優良住宅というものをご存知でしょうか。長期優良住宅とは、長期的に建物を良い状態で保つための基準などを定めたものですが、詳しくは「長期優良住宅の解説とメリット・デメリット・注意点」を参照してください。

この長期優良住宅では、耐震性において建築基準法で想定する1.25倍の地震でも倒壊しないものを求めています。耐震性を重視する人にとって安心感の高まる条件であるため、長期優良住宅を買う人もいます。しかし、その設計通りに建築されているかを検査しない(建築中に確認しない)制度であるため、施工ミスがあればそれだけの耐震性を有していないこともありうるのです。

参考として、「長期優良住宅のデメリットと注意点(2)長期優良住宅と建物の施工品質は無関係」にもう少し書いていますのでご覧ください。

 

中古住宅の耐震性のチェックなら耐震診断が有効か?

少し話がそれてしまいましたが、中古住宅を購入するときには、前述の3大チェックポイントを考慮して購入判断したいものです。しかし、普通に物件を見学して間取図を眺めるだけでは判断できません。そのために、耐震診断を行うという方法があります。

耐震診断は、まさにその建物の耐震性がどの程度のものであるか確認する診断であり、誰もが利用すればよいものです。設計上の確認のほか、現地で劣化状況も確認したうえで診断結果を出すものですから、まさに!というものです。

ただ、この耐震診断を適切に実施するうえで、あまりに大きな壁があります。それは、多くの中古住宅の売買時点において、その住宅の設計図が無いという問題です。設計図を見て柱や筋交いの位置・種類などを確認し、現地で確認して劣化状況を加味するなどして計算する(一般的には耐震診断のソフトで計算する)のですが、設計図がなければできません。

中古住宅の売主(所有者)が、新築時もしくは中古で購入したときに新築した業者や前の所有者から、設計図を引き継いでいないことがあまりに多いために起こっている問題です。築年数が古い住宅であるほど、設計図が残っていない確率が高く、築20年を超える住宅で設計図が揃っている住宅に出会う方が難しいのは間違いありません。

築5年程度の物件でも、売主が設計図をもっていないことも珍しいことではありません。買主に設計図を引き継いでいく意識が低い新築業者が多いからです(特に建売業者の意識の低さが問題)。

つまり、耐震診断は本来ならば有効は方法であるものの、設計図が無いために適切に実行できないことが多いということであり、中古住宅購入時に有効な方法とは言い辛いものです。

 

ホームインスペクション(住宅診断)なら有効か?

中古住宅を購入するとき、耐震診断に変わるものとしてホームインスペクション(住宅診断)が多く利用されていますが、これは有効なものでしょうか。

耐震診断のように耐震性を計算することはできないものの、建物の劣化状況や新築工事の際の施工ミスがないかどうかを可能な範囲で確認することができ、これを中古住宅購入の参考とすることができます。劣化状況や新築時の施工ミスの有無をチェックするということは、耐震性に関する3つのチェックポイントのうちの2つを確認するということです。

ホームインスペクション(住宅診断)をすれば、100%の安心を得られるというものではないですが、不明な点の多い中古住宅購入において、購入判断に役立てられるものだと言えます。

残る問題、設計上の耐震性について何か確認する方法がないのでしょうか。これについては、次の「1981年(昭和56年)以降に建築された中古住宅と耐震性」をご覧ください。

 

執筆者:専門家

 

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