一戸建て住宅購入時の耐震診断とホームインスペクション(住宅診断)

住宅の購入を考えている多くの人にとって高い関心事の1つが、建物の耐震性です。今回は、一戸建て住宅を購入するときの耐震性や耐震診断のことや、耐震診断と似たもののようで異なるホームインスペクション(住宅診断)について解説します。

住宅の耐震性は大事なこと

2016年4月に熊本地震が起こり、多くの住宅などの建物の被害が報道されました。東日本大震災や中越地震、阪神大震災などもありましたが、これ以外にも多くの地震が起こってきています。その都度、住宅の倒壊と耐震性の問題も取り上げられています。

同じ地震の揺れを受けても被害が大きい住宅もあれば、そうでもない住宅もあります。このことの原因を単純にその建物の耐震性の違いだけに求めるつもりはありません。ちょっとした所在地の相違で揺れの伝わり方や地盤が異なることもあるからです。

しかし、建物の持つ耐震性が大きく影響することも事実ですから、住宅を購入するときには耐震性について確認したいと考えるのは当然のことです。

以降では、一戸建て住宅と耐震性、耐震診断についてお話しします。

耐震性の確認は耐震診断が理想だが・・・

住宅の耐震性を確認する方法としては、耐震診断というキーワードを思い浮かべる人は多いでしょう。耐震診断を実施することでその建物が地震の揺れに対してどれほどの強さを持っているかを知り、住宅の購入判断や購入後の補強工事に活用したいものです。

住宅といっても、新築と中古では耐震性の確認やその必要性に相違があるため、新築住宅と中古住宅にわけて説明します。

新築住宅の耐震性と耐震診断

まずは新築住宅から説明します。新築住宅の耐震性は、実はその住宅の設計者や建築確認制度によって確認されているはずです。ですから、本来ならば買主が新築住宅の耐震性を心配する必要はないことなのです。但し、この「本来ならば」というところが問題であり、注目すべき点です。

建物の本来有する耐震性能は設計者や建築確認制度によって確保されているものの、その通りに建築現場で施工されているかどうかは、全く別の話なのです。

簡単に言えば、図面上は大丈夫ではあるものの、現場が大丈夫どうかはわからないということです。これが新築住宅の耐震性の現実です。

新築住宅を購入するときに第三者に耐震診断を依頼したとしても、設計図から耐力壁などの情報を拾い出していき、耐震性を求めていきますが、図面上は大丈夫なはずですから、この作業にはそれほど意味がありません。新築住宅の買主が費用をかけてまでする必要性はないでしょう。

但し、図面上の問題がなくとも建築時の施工ミスなどがあれば、本来もつはずの耐震性を持たない可能性もありますから、図面のチェックというよりは現場で検査する方が効果的で、買主が費用をかけるだけの意義もあります。

完成時にしっかり検査することも重要ですが、できれば建築の途中も住宅検査しておきたいものです。

新築住宅の耐震性

中古住宅の耐震性と耐震診断

次に中古住宅についてです。中古住宅でも築年数が新しいものであれば、新築するときに図面のチェックを受けているため、新築住宅と同じように耐震診断で建物プランを確認するというよりは、建物の劣化具合や新築当時の施工ミスがないかを住宅診断する方がよいでしょう。

どれぐらいの築年数でラインを引くのかは難しいところですが、築10年程度以内であれば、概ねこの考えでよいでしょう。

耐震診断は、建物のプランが元々持っているもの(図面上のもの)と診断時点における建物の劣化具合から診断していくものです。築年数の経過とともに建物が劣化していくのは当然のことですから、新築当時に十分な耐震性を有していた住宅が、今では耐震性能が不足しているということもあることです。

よって、築年数が経過した中古住宅では、耐震診断の実施も考えたいところです。

図面不足と木造以外の耐震診断の問題

耐震診断は、実施するための条件が揃わなければ、適切に実施することが困難です。前述したように、設計図から耐力壁などの必要な情報を確認しなければなりませんので、設計図が無ければたちまち実施困難となってしまいます。

中古住宅の売買を行う際、売主が新築当時の設計図やリフォームしたときの設計図を持っているならばよいのですが、紛失してしまっていることが非常に多く、耐震診断に必要な情報が不足しているのです。ちなみに、売主が紛失したとは限らず、新築業者からもらっていないということもよくあることです。

図面がなく、現場で見て得た情報のみで耐震診断をしたとしても、その診断結果は正確性を著しく欠いていることが多いでしょう。壁や天井を解体してまで実施するのであれば話は別なのですが、購入前の住宅でそこまでするのは無理があります。

また、木造以外の住宅である鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物であれば、その耐震診断の実施のためには費用が大きくなってしまい、中古住宅の購入前に行うものとしては現実的に無理があります。

耐震診断とホームインスペクション(住宅診断)

これまでに耐震診断は大事なものではあるものの、一方で住宅購入前に耐震診断を適切に実施することの難しさを説明してきました。しかし、耐震性を全く確認できないわけではなく、ホームインスペクション(住宅診断)を活用することで耐震性の確認を補う方法もありますから、その利用も考えてみましょう。

住宅診断(ホームインスペクション)

ホームインスペクション(住宅診断)と耐震診断は別物

耐震診断は、図面と現場の両方の調査から建物の耐震性を診断するサービスです。現場での調査では建物の劣化具合を確認したり、耐震性に関係のある個所において図面通りのプランであるか見える範囲で確認したりするものです。

一方で、ホームインスペクション(住宅診断)とは、建物の施工品質や劣化具合を診断するサービスです。

つまり、耐震診断とホームインスペクション(住宅診断)は別物ではあるものの、現場で行う調査は重なるところが多いです。ホームインスペクション(住宅診断)は耐震性と関係ない点までも現場で調査を行いますから、耐震診断の現場調査よりも、住宅の購入判断や補修等のメンテナンスの参考にするためにも有益な情報が得られます。

例えば、「外壁の塗装の劣化が進んでおり、早めに塗り替えた方が住宅を長持ちさせるために有効である」などといったアドバイスを受けられるのが、ホームインスペクション(住宅診断)の特長の1つです。こういったアドバイスは耐震診断では得られません。

耐震診断でも、より精密な診断をする場合は、壁や天井等を解体するなどして、ホームインスペクション(住宅診断)では実施しないような調査をすることもあります。しかし、これは既に述べたように住宅購入前に実施するには非現実的なものです(売主の了解を得られない)。

地震による住宅の倒壊は施工ミスによるものも多い

冒頭の話に戻りますが、大きな地震が起こるたびに倒壊した住宅の様子が報道されます。この倒壊の原因は、耐震性に問題があったと解釈されることが多いですが、耐震性に関することのなかでも、施工ミス・不具合によるものが多いことを知っておくべきでしょう。

新築したときやリフォーム・リノベーションしたときの施工ミス(不具合)が重大な原因の1つとなり、地震の大きな揺れで倒壊につながっているケースです。施工ミスがないかどうかは、第三者が住宅検査することで予防することができるものです。これだけで絶対に倒壊しないわけではありませんが、被害をある程度抑える効果が期待できます。

住宅購入時はホームインスペクション(住宅診断)が現実的で効果的

ここまで見てきたように、耐震診断を住宅購入時に実施することが難しいものの、ホームインスペクション(住宅診断)を利用することで、購入判断や購入後のメンテナンス、補修工事などの参考にすることができることがわかりました。

完成前の新築住宅なら建築中と完成後に、中古住宅ならできれば購入前に利用するとよいでしょう。

 
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