誰でもできる一戸建て住宅の耐震性のチェックポイント

一戸建て住宅を購入するときに気になる大事なポイントの1つは、耐震性です。地震国ですから、耐震性に関心が集まるのは当然ですし、これを無視して安心できる住宅購入はないでしょう。

しかし、耐震性を細かく計算して確認することは一般の人にはあまりに難解なことです。専門家に耐震診断などを依頼するのも1つの方法ですが、購入検討する住宅を片っ端から依頼するわけにもいきません。

物件選びをするときに、買主が自分で確認できる基本的な耐震性のチェックポイントをお伝えしますので、これを参考にして物件の絞り込みや選択に活かしてみてはどうでしょうか。

一戸建て住宅の耐震性のチェックポイント

ここでは、誰でもできる基本的な耐震性のチェックポイントをあげて、1つずつ解説します。以下がチェックポイントの一覧です。

  • 壁量の少ない住宅と壁の配置・バランスが悪い住宅
  • 狭小地・細長い土地+駐車場の住宅
  • 建物の角に窓がある住宅
  • 吹抜け(階段も吹抜け)のある住宅
  • 木造3階建て住宅
  • 2000年(平成12年)以前に建築された中古住宅
  • 1981年(昭和56年)以前に建築された中古住宅
  • 建物の劣化の進行具合と新築時の施工レベル

上記のチェックポイントについて解説していきますが、その前に誤解のないように次のことを理解しておいてください。

住宅を新築するときには、最低限度の耐震性の確認は行われています。建築確認と呼ばれていますが、決められた手続きに従い、簡易な検査も受けています。市場に出ている住宅は基本的にはこれをクリアしているものですから、チェックポイントに引っかかるものであっても合法な建物です。

合法な住宅だから大きな地震に対しても安心で安全なのかといえば、そうではありません。法律を守れば安心というわけではありませんからね。合法な住宅であっても耐震性の観点で条件のよくないものはあるわけです。これをダメな住宅と断罪するわけではありませんが、購入すべきかどうか検討する必要はあるでしょう。

また、購入するにしても、問題点がわかっていれば対策を考えることもできますね。そういう視点でも、ここでご紹介する耐震性のチェックポイントを見てください。

壁量の少ない住宅と壁の配置・バランスが悪い住宅

建物の耐震性を考える上で基本的なことともいえるのが、壁です。水平方向というとちょっと硬い表現ですが、横方向からの力に耐える耐力壁と呼ばれる壁は非常に重要なものです。この壁の量(=壁量)が少ないと横からの力に弱いことになります。

建物のバランスを図面でチェック

横からの力に代表されるのが地震です。ですから、地震の揺れに耐えるために重要なものだと言われています。ちなみに、横からの揺れは地震に限らず台風の非常に強い風もそうです。

また、壁の量だけ見ていてはいけません。壁の配置、バランスが重要であり、バランスの悪い住宅である場合には耐震性の劣る箇所に負担がかかりやすくなり、建物を傷めたり倒壊する可能性が高まったりします。

耐力壁は量とバランスの両方に注意しなければなりません。各階平面図を見て、西面には壁が多いけど東面には壁が少ないと感じるようであれば、バランスの問題があるかもしれないと理解しましょう。

狭小地・細長い土地+駐車場の住宅

都会の住宅地はどうしても1区画の土地の面積が小さくなります。土地が小さいと間口が狭いことが多いですね。土地が小さくて間口の狭い住宅では、1階に駐車場を設けるしかありません。そして、駐車場のすぐ横に玄関という建物プランが多くなりがちです。建物の道路側に駐車場や玄関があることで、道路側の壁が少なくなってしまいがちです。

壁のバランスが大事だと述べましたが、狭小地に建てたれた住宅では、どうしてもこれに該当する可能性が高まります。

また、土地の面積が小さくなくても間口が狭くて奥に細長い形状の土地でも同じように道路側に駐車場や玄関を持ってくることになりますね。但し、駐車スペースが建物から分離されているならば、そう心配はいりません。狭小地などの間口の狭い住宅地である場合には、駐車場が建物の1階部分にあるか、建物から独立したスペースであるかによって耐震性に違いが出てくる可能性があるのでチェックしましょう。

建物の角に出窓がある住宅

建物の角(コーナー部分)に窓がある住宅には、耐震性の点で注意が必要です。建物の角に窓があるデザインは、外観がよいと考えて流行ったことがあります。とくに出窓が多いですね。中古住宅を購入するときに、いくつもの物件を見学する中でそういった物件に出会うこともあるかもしれません。

デザインは良いのですが、建物の角の窓は耐震性の点では歓迎されません。角は耐震上、大事な部分であるため、この位置には耐力壁を配置することが好ましいのですが、窓があると耐力壁にできません。これだけで耐震性の点で不利になることを知っておきましょう。

吹抜けのある住宅

吹抜けも人気がありますが、耐震性の点では注意したい点です。吹抜けは、その開放感が大きなメリットですが、それはそこに床がないからです。床は横方向の力を支える意味で大事なものなのですが、それがないということは、吹抜け周辺は横方向の力に弱いということです。

吹抜けはないから関係ないと考えたあなたも要注意です。2階建て以上の住宅であれば、階段がありますが、階段は基本的に吹抜けと同じです。上階の床の無いスペースがありますから、そのスペースは横方向の力には弱いのです。

階段のある住宅がダメだと言っているわけではありません。その部分がどうしても弱くなりがちだということです。仕方ないことですが、これは理解しておいてください。そして、3階建ての住宅で1階から3階まで同じ個所に階段がある場合には、各階で同じ方向が弱いことになりますね。こういった住宅は多いですから、買ってはいけないというわけではありません。

吹抜けの家のメリット・デメリットと注意点」も参考になるので確認してください。

木造3階建て住宅

木造3階建ては耐震性の点で不利となることが多いです。全ての3階建て住宅が該当するわけではありません。3階建て住宅は新築する際に構造計算をしてプランニングされているため、木造2階建てよりも構造上の確認を細かくされていると言ってもよいでしょう。

3階建て住宅

ただ、狭小地などで見られるような細い建物で高さのある3階建てとなれば、建物は揺れやすいです。建物の揺れについて何度も相談を受けたことがありますが、その多くは3階建てでした。

ここまでにあげてきた壁量や壁のバランス、建物コーナー部分の出窓、さらには吹抜けなどといったことは、1つ1つがマイナス材料ですが、それ単独で決定的に危ないというわけではありません。それぞれの程度にもよりますが、2つ、3つの条件に合致するならば、一度心配して専門家に相談してもよいでしょう。

極端な話ですが、狭小地の木造3階建てで、道路側の建物1階に車庫と玄関があることで壁のバランスがあまりよくなく、そのうえで角に出窓を設けた吹抜けのある住宅となれば、怖いですね。これらすべてが揃った住宅というのはさすがになかなかお目にかかれませんが。

1981年(昭和56年)以前に建築された中古住宅

一戸建て住宅を購入するときの耐震性に関するチェックポイントは、ここで少し見方がかわります。単純に建物の築年数に着目する話です。

建物の建築は、建築基準法に基づいています。この建築基準法は、これまでに何度も何度も改正されてきたため、その時代の建物の性能面に深く関係があります。もちろん、耐震性の点でもそうです。中古住宅を購入する人は、2つの建築基準法の改正に注目してください。

1つ目が1981年(昭和56年)の改正です。一般的に不動産・建築業界では、これ以降の基準を新耐震基準と呼んでいますが、逆にそれ以前のものを旧耐震基準とも呼んでいます。耐震に対する考え大きく変わり、木造住宅では壁量に関して大きな見直しがありました。

1981年(昭和56年)以降の新耐震基準で建築された住宅であるかどうかは、大事なチェックポイントです。但し、その建物の工事期間のことを考慮すると新耐震基準が適用されているのは、この年の後半か翌年以降に完成した住宅ということになりますから注意しましょう。

2000年(平成12年)以前に建築された中古住宅

注目すべき建築基準法改正の2つ目が、2000年(平成12年)の建築基準法改正です。このときの改正によって、構造や地盤に関する規定が厳しくなったため、これ以降の住宅の耐震性はそれ以前に建築された住宅よりも高いことになります。

1981年(昭和56年)以降というラインよりも、より安心できるものですから、耐震性に関してより安心を求めるならば2000年(平成12年)以降の基準で建築された住宅を探すのも方法です。

建物の劣化の進行具合と新築時の施工レベル

耐震性をチェックする上で忘れてはならないポイントであるのが、建物の劣化や新築時の施工レベルです。これまでに構造に関係するようなリフォームを行っている住宅であれば、そのリフォームの施工レベルも重要です。

耐震性は建物のプラン上の耐震評価と現在のその建物の状態の両方が影響するものです。多少、耐震性に難のあるプランでも新築するときの施工レベルが非常によく、かつその後の劣化具合も進行していない場合には、大きな地震を受けても大きな被害(倒壊や半倒壊)を受けていないこともありますし、逆に建物プラン上は耐震性に問題がないにも関わらず、施工レベルが悪かったために大きな被害を受けていることもあります。

耐震性を考える上では、建物プランも建物の状態(劣化や施工レベル)も両方が大事だということです。ただ、この点が前述したチェックポイントに比べてもっとも確認が難しいかもしれません。傾きがないか確認したり、床下や屋根裏で金物の有無を確認したりといったことはしておきたいものですから、第三者の専門家を利用して住宅診断(ホームインスペクション)するとよいでしょう。

このとき、不動産会社の斡旋・紹介に頼らず買主が自分で住宅診断会社を探すことが大事なポイントです。斡旋・紹介の場合には、その住宅売りたいと考える不動産会社の気持ちに配慮する住宅診断会社もあるので注意が必要です。

こうしてみてみると、難しい耐震性のチェックですが、あなた自身でも確認できるポイントがいくつもありますね。住宅購入の際には、チェックしてみましょう。
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