ホームインスペクションは中古住宅にこそ必要。必要ないという不動産会社に注意

ホームインスペクションは中古住宅にこそ必要

住宅を購入したり新築したりリフォームしたりするときに利用されることが多いホームインスペクション(住宅診断)ですが、中古住宅を購入するときにも利用されることは非常に多いです。建物の劣化状態を知った上で購入するべきかどうか考えたいという買主のニーズが強いのは当然だと言えるでしょう。

しかし、中古住宅の売買を仲介する不動産会社のなかには(正確には担当する営業マンのなかには)、中古住宅の購入に際してホームインスペクションをする必要はないと言う人もいるため、利用するかどうか迷う人もいるようです。

そこで、今回のコラムでは、中古住宅にこそホームインスペクションが必要である理由や、ホームインスペクションで調査すること、依頼するタイミングについて解説します。中古住宅を購入する人は、できれば売買契約の前にこの記事を読んでおき、安心できるマイホーム取得に活用してください。

中古住宅のホームインスペクションとは何か

中古住宅のホームインスペクション

ホームインスペクションとは、建物の状態を把握するための調査のことで、新築住宅では施工不具合の有無を確認し、中古住宅では劣化状態を確認します。新築当時の施工不具合が補修されずに残っておれば、中古住宅のホームインスペクションで指摘されることもよくあります。

建物の専門家が行う調査

建築物は、専門性が高いために少し勉強すれば誰でもホームインスペクションを実施できるというわけではありません。住宅建築やリフォームの設計・監理、工事管理の知識や経験がないと難しいですし、ホームインスペクションを業務として行うための研修・講習の受講も必要です。

ホームインスペクションは、行う専門家(ホームインスペクターとも呼ばれる)が行う必要のあるものなのです。

ホームインスペクションの利用有無の確認が義務化

中古住宅の売買に際しては、不動産会社から売主や買主に対して、ホームインスペクションを利用するかどうか確認することが宅地建物取引業法により義務付けられています(2018年4月より施行されている)。対象は、あくまでも中古住宅であり、新築住宅は含まれておりません。

稀に誤解している人がいますが、ホームインスペクションの実施が義務化されたわけではなく、不動産会社から売主・買主へ利用するか確認すること、利用する場合にインスペクション業者を紹介・斡旋できるかどうかを告知することが義務付けられたものです。

参照:築30年以上の中古住宅の住宅診断(ホームインスペクション)は必須

不動産会社がホームインスペクションを嫌がることがある

嫌がる不動産会社

不動産会社の営業マンによっては、買主からホームインスペクションを入れたいと申し出しても、「中古住宅で利用する人はいない」「中古は劣化していて当たり前だから診断する必要がない」などと説明し、何とか利用をあきらめさせようとする人がいます。

不動産会社が嫌がる理由はいくつかありますが、そのうち代表的なものは、以下の2つです。

ホームインスペクションで不具合が見つかると購入中止になるかもしれないから
ホームインスペクションを手配する間に他の業者が売ってしまうかもしれないから

不動産会社の営業マンとしては、成功報酬である仲介手数料とそれ次第で決まる歩合給のことを考えて、自分で成約したいわけですから、上のような理由などで嫌がっているわけです。営業マンが悪いというよりは、業界の仕組みの問題ですね。

参照:ホームインスペクションを嫌がる理由(不動産会社や売主の考え)と買主の対応方法

中古住宅にこそホームインスペクションが必要である理由

中古住宅にホームインスペクションが必要な理由

不動産会社がいくら嫌がろうが、中古住宅を購入する人にとって、ホームインスペクションが必要であることに変わりありません。ただ必要というよりも、重要なサービスなので、その代表的な4つの理由を紹介しておきます。

理由1:購入判断の参考になる

中古住宅のホームインスペクションでは、様々な箇所の建物の劣化事象を確認することができます。ときには、大きな問題がいくつも見つかることがありますから、その住宅を購入するかどうか判断するときの良い参考材料になります。

このことは、ホームインスペクションを中古物件の購入に際して利用する大きな理由だと言えるでしょう。

理由2:購入後に想定外の補修工事費用があると大変

建築に詳しくない人だけで物件を見て購入判断した場合、購入後、入居してから気付いていなかった建物の問題に遭遇し、その補修工事・メンテナンスに多大なコストがかかってしまうこともあります。専門家に診断してもらうことで、その全てを防げるわけではないですが、自分たちだけでは防げなかった問題を未然に防ぐことができるケースはよくあります。

ギリギリの予算で購入した住宅の場合、想定外の補修工事費用で100万円以上も必要となれば、それだけも大変ですね。

理由3:不動産仲介業者は責任をとらない

「中古は劣化していて当たり前だから診断する必要がない」などと説明する不動産会社のいうことを聞いて、ホームインスペクションを利用しなかった人が、購入後に問題を発見して不動産会社にフォローをお願いしても、何も対応してくれないことは少なくありません。

そもそも何か責任をとってもらえるわけでもないので、インスペクションを不要だと言う人の言うことを簡単に信用しない方がよいでしょう。

理由4: 実際に不具合だらけの中古住宅がある

ホームインスペクションを依頼すべきかどうかは、そもそも中古住宅にどれだけ多くの不具合があるかどうかで判断したい人は多いでしょう。

もう20年もホームインスペクションをしてきた実績豊富なアネストでは、毎日のようにどこかでインスペクションをしていますが、様々な不具合や著しい劣化事象を見てきました。

屋根裏の雨漏り、床下の漏水やシロアリ被害、著しい傾き、構造クラックなど、多数の症状があります。購入する前にこういった問題の有無をできる限り明らかにしておくことは、売主にとっても後から責任追及されるリスクを抑えられ、買主も現況をある程度は把握して購入できるため、双方にとってよいことです。

ホームインスペクションの調査範囲(中古住宅の場合)

調査範囲

中古住宅における一般的なホームインスペクションの調査範囲も気になるところですね。一体、何を見てくれるのか事前に把握しておきたいでしょう。ここでは、一戸建てとマンションに分けて解説します。

中古一戸建ての調査範囲

中古一戸建て住宅におけるホームインスペクションの調査範囲は以下のとおりです。

建物外部(屋外)

基礎・外壁・屋根・雨樋・バルコニーが調査対象範囲です。

ただし、屋根は地上やバルコニーから目視できる範囲が一般的なので、屋根の勾配等の条件によってはほとんど確認できないこともあります。

基礎や外壁のうち、障害物で確認できない箇所があったり、隣地との間が狭くて建物周囲全ての確認をできないことがあったりします。

カースペースやフェンス等の外構部分は、調査対象としていないインスペクション業者も多いので、事前に調査してくれるか聞いておきましょう。外構自体を重視していなくても、外構に出ている症状が重要なことの参考になることもあるからです。

建物内部(屋内)

リビング・洋室などの居室、廊下、洗面室などの床・壁・天井の目視確認や、床・壁の傾斜測定、建具・設備関係の動作確認が調査対象です。

水道等のライフラインを使用できない場合、その動作確認はできません。

床下や小屋裏(屋根裏)は、点検口などの入り口がないと確認することができません。点検口があっても、内部が狭いときや障害物があるときには、進入できないこともあります。また、奥まで進入調査することについては、オプション扱いとしていることが一般的です。

・中古マンションの調査範囲

中古マンションにおけるホームインスペクションの調査範囲は以下のとおりです。

共用部分

中古マンションのホームインスペクションでは、共用部分の調査範囲は非常に限定的です。マンションのメインエントランスから対象住戸へ至るまでの経路から目視できる範囲で、基礎、外壁、共用部分の床・壁・天井などを目視確認します。

構造耐力上の主要な部位を深く調査できるというわけではなく、表面に著しい症状がないか確認する程度です。

専有部分(専用使用できる共用部分を含む)

専有部分とは、対象となる住戸の内部です。住戸内(室内)で、床・壁・天井の目視確認、水回り設備などの動作確認をします。また、当該住戸用のバルコニーや専用ポーチも調査対象となります。

ほとんどのマンションの住戸の浴室は、ユニットバスになっており、そこに天井点検口が付いていることから、点検口内部の調査も含まれています。

ホームインスペクション

一級建築士が新築・中古住宅の施工不具合や著しい劣化を診断するホームインスペクション(住宅診断)で安心を。

ホームインスペクション依頼するタイミング

ホームインスペクションのタイミング

最後に、中古住宅のホームインスペクションを依頼するタイミングについて解説します。

依頼するタイミングの候補としては、大きく分けて以下の3つが考えられます。

  1. 売買契約をする前
  2. 売買契約後・引渡し前
  3. 売買契約後・引渡し後

ホームインスペクションが必要な理由の1つに、「購入判断の参考になる」があるように、購入前、つまり売買契約をする前の利用に最も大きな意義があると言えます。売買契約前なら、結果次第で購入中止もできることは大きなメリットでもあります。

売買契約前に不動産会社からホームインスペクションについて聞いておらず、契約後になって依頼したいと考えた人や、いずれにしても購入するので契約後でよいと考えた人は、売買契約後に利用しています。

その場合、引渡し前に利用することをお勧めします。その理由は、引渡し前(=残金決済前)の方が売主との交渉がしやすいからです。見つかった問題によっては、売主に補修請求や契約解除などの交渉をする可能性もありますが、残金決済後では交渉力が弱いことが多いからです。

最後に引渡し後に利用を考えている人にアドバイスします。同じ引渡し後であっても、家財道具を入れる前であれば、必ず入れる前に利用してください。家財道具を入れてしまうと、それによって隠れて確認できない箇所が増えるからです。

たとえば、冷蔵庫や棚によって隠れた床・壁、多くの荷物が入った収納内などは確認できなくなります。理想は、家財道具・荷物などが何もない状況で行うホームインスペクションです。


ホームインスペクションは中古住宅にこそ必要であることについて、解説しましたがいかがでしょうか。不動産会社の言うことだけで判断することなく、自分で調べて、考えて、できる限り適切に判断できるといいでうすね。