中古住宅を購入するときの不動産業者選び

中古住宅を購入するときは、身内などから購入する場合を除いてはほぼ全てのケースにおいて不動産業者が売買に関係しているはずです。中古物件の売買を仲介する不動産業者はもちろん、不動産業者が売主となっている中古物件も多いです。

家を買うならば不動産業者選びも大切だと聞いている人も多いと思いますが、これから中古住宅を購入する人が不動産業者選びについて知っておくべき基礎知識やこれに関する不動産業界の実態について解説するので、理解してから不動産業者や物件探しをするようにしましょう。

1.中古住宅を売主が直接販売するケースの不動産業者選び

最初に、不動産業者が売主となっている中古住宅のケースについて解説します。買主が不動産業者である売主から直接購入する場合は、不動産業者を選ぶことができません。売主(=不動産業者)の対応が悪くて心配であっても業者を変更することはできないわけです。

担当の営業マンを変更してもらうことは、その理由如何によっては可能なこともありますが、業者は選べないという点が買主にとってのデメリットとなります。

しかし、不動産業者が仲介している物件と違って買主間の競争(誰が買うか)については売主から正確な情報を得られやすいというメリットがあります。売主がどれくらいの人がその物件を見学して、気に入っている人(前向きに考えていそうな人)がどれくらいいるか把握しやすいからです。

但し、営業マンは契約をとるために買主を焦らせる目的で事実と異なる状況を話すこともあるので、そこは注意が必要です。たとえば、他に前向きな人がいないにも関わらず、「早く決断しないと昨日の見学者が先に申し込みそうだ」などと焦らせることがあるのです。

2.中古住宅を不動産仲介業者が仲介するケースの不動産業者選び

次に不動産業者が仲介するケースにおける不動産業者選びについて解説します。中古住宅の売買の多くは、仲介(媒介ともいう)です。売主から売却依頼を受けた不動産業者が買主を探して売買するのです。まずは仲介の仕組みを理解していないと話がややこしくなりますから、仲介のことから説明しましょう。

2-1.不動産売買の仲介の仕組み

売主が一般の個人である場合、自分自身で買主を探すことは困難ですから、普通は不動産業者に売却を依頼して買主を探してもらいます。そして、中古住宅を買いたい人も自分で売主を探すことは困難ですから、不動産業者を介して売り物件を探します。

このとき、買主はインターネットなどで自分で物件情報を見て物件探しをしていることが多いため、自分で探しているという意識もあると思いますが、その物件情報も不動産業者が広告料を払って載せているものであり、その不動産業者へ問い合わせることになりますから、その業者に仲介してもらうわけですね。

不動産業者1社が仲介

上の図のような仕組みになっているわけです。しかし、間に入る不動産業者は1社とは限らず2社の場合もあります(以下の図を参照)。

不動産業者2社が仲介

売主側と買主側の不動産仲介業者が別になっているのがわかりますね。仲介にもこの2つのタイプがあることを理解した上で以下の解説を読んでください。

なお、仲介の仕組みを詳しく知りたい方は「住宅売買の基本的な仕組み(取引形態)とメリット・デメリット」を参照ください。

2-2.売主から仲介依頼を受けている不動産業者から買う(1社のみが仲介)

売主から売却依頼を受けている不動産業者と買主が直接交渉するケースから説明します。以下の図のパターンですね。

不動産業者1社が仲介

このケースにおいて、買主が不動産業者を選ぶには、売主が複数の不動産業者に売却依頼している場合にのみ可能です。売主が売却依頼する際、不動産業者1社にのみ依頼することもあれば、複数の業者に依頼する場合もあるのですが、前者の場合は他の不動産業者を選べない状況です。

とはいえ、次に説明する「2-3.売主側の仲介業者ではない不動産業者から買う」のように、売主側の仲介業者以外の不動産業者に買主側の仲介をしてもらうことも可能です。

但し、そうするかどうかはメリット・デメリットを考えておく必要があります。

売主側の仲介をする不動産業者と直接交渉して買主側の仲介もしてもらう場合(つまり仲介が1社のみの場合)では、2社が仲介するケースよりも他の不動産業者がその物件を先に売ってしまうリスクが下がります。何故ならば、売主側の仲介をする不動産業者は他社がその物件を売るよりも自社が売る方が儲かるので、他社に売らせようとしないことが頻繁にあるからです。これを物件の囲い込みといって不動産業界の根深い問題の1つとなっています。

よって、無理に買主側にも不動産業者を入れて2社が仲介する形にせず、1社のみが仲介する形で購入する方がメリットは大きいと言えます。

逆にデメリットとしては、不動産業者が売主のほうを優先的に扱う傾向がみられることがある点です。その物件に関する売主は一人だけですが、買主は他にも見つけられる可能性があるために起こりうる現象です。

2-3.売主側の仲介業者ではない不動産業者から買う(2社が仲介)

不動産仲介業者が2社となるケースについて説明します。以下の図のように売主側の仲介業者と買主側の仲介業者が別に存在するケースです。

不動産業者2社が仲介

売主から売却依頼を受けた不動産業者は、自社で買主を探したいと考えることが多いですが、他の不動産業者(売主から直接依頼を受けていない業者)に対しても物件情報を共有しなければならないことになっているため、他社が買主を見つけてくることもできるのです。

買主がある不動産業者からいろいろな物件を紹介してもらうなかで、その業者が売主から直接依頼を受けているもの(1社のみ仲介になる)もあれば、他社が売主側の仲介をしているもの(2社の仲介になる)もあるでしょう。

このケースの場合、買主は割と自由に不動産業者を選ぶことができます。同じ物件の広告をいろいろな不動産業者が掲載していることがありますが、この場合は電話やメールの対応がよい業者のほうが安心感はあるでしょう。担当営業マンの対応がよくない場合は積極的に他業者に問い合わせてみるとよいでしょう。

なかには、仲介手数料の金額に大きな違いがあるケースもありますから、問合せする前に物件広告やその業者のホームページなどに書かれている情報をチェックしておくとよいでしょう。ちなみに、仲介手数料は法律で上限を定めているだけなので、上限金額より低い金額とすることは不動産業者の自由です(上限金額を請求することが多いですが)。

但し、一度物件を案内してもらってから、その物件に関する仲介を他社に変更する場合はトラブルになることもあるので注意が必要です。

2-4.実際に不動産仲介業者を選ぶのは難しい

最後に、実際に中古住宅を購入するうえで買主が知っておいた方がよい現実について説明しておきます。それは、不動産業者を選びたくとも選ぶことがなかなか難しいという現実です。

既に書いたように、売主が不動産業者でその業者が自ら販売している場合は全く選べません。仲介している場合でも、売主から仲介の依頼を受けている業者が1社ならば、原則としてその業者を取引から外すことはできません。

つまり、不動産業者を選べるのは、売主側と買主側の業者が異なる場合(2社が仲介するケース)に買主側の仲介業者を選ぶか、売主が複数の業者に売却依頼している場合にその業者のいずれかを選ぶケースということになります。

但し、インターネットなどの物件広告を見ても、その広告を載せている不動産業者が売主から直接依頼を受けているのかどうか判別できないこともあります。確実に判別できるのは、広告内に書かれている取引態様の項目に専任媒介または専属選任媒介と書かれているときくらいです。

専任媒介や専属選任媒介は、売主がその1社にのみ売却を依頼していることを示すワードなので、判別できるのです。「媒介」「仲介」「一般媒介」と書いているケースでは、他の不動産業者も取り扱っている可能性が高いですから業者の比較検討をするとよいでしょう。

物件選びと同じくらい大切なはずの不動産業者選びですが、現実的にはほとんど選べないことが多いのです。あまりに対応がひどい場合はその物件の購入をあきらめる人もいますが、詳しい人に相談したりホームインスペクション(住宅診断)を利用したりしながら、上手く乗り切っていきたいものですね。