隣地で解体工事があるときの注意点

稀に住宅の所有者から、次のような相談を受けることがあります。

「隣でビルの解体工事が始まってから自宅が揺れることがあり、よく見ると以前にはなかったひび割れが壁や基礎に発生した。心配なので、建物を調査してほしい。」

この調査の目的が、ひび割れなどの症状によって、建物に問題が生じているようであれば、補修などの対応を検討するので、その参考のために建物を調査したいというものであれば、お受けできるのですが、隣の工事によって生じたことを証明してほしいということになれば、難しいですね。

ここでは、自宅の隣地で解体などの大きな工事があるときに注意しておくべきことなどを解説します。

隣地の工事と自宅への影響の問題

民家でもビルでもマンションでも、いずれは取り壊すことはあるものです。これは、どこでもありうることですから、隣地の解体による影響は、住宅などの建物を所有する人の誰にでも降りかかる可能性のあるテーマです。

隣地の工事で建物が悪影響を受けるか?

それでは、実際に隣地で何らかの工事があれば、自宅が悪影響を受ける可能性があるのでしょうか。

建物は揺れによる影響を受けることがありますから、隣地で揺れを伴うような工事が実施されたときには、自宅が揺れ、それによってひび割れやなどの症状が出ることがあります。ひどいときには、沈下する可能性も否定はできません。

多くの工事は朝から夕方までの間に実施されますが、その時間帯に家にいれば、揺れを感じて自宅は大丈夫だろうかと心配することもあるでしょう。

どのような工事で影響を受けるか

影響を受ける可能性のある工事は、地盤に強い衝撃を与えるような工事です。大きなビルやマンションなどの構造物は、地中深くに建築物の一部が存在することも多いため、これを解体撤去するときには振動が伝わりやすいものです。

隣地が長い間、駐車場であったために心配していなかったものの、以前の建物の埋設物が地中深くにまであり、その撤去工事がおおがかりなものとなって、建物が揺れたという事例もあります。

また、解体ではなく、新築工事に際して強い振動とその影響を受ける可能性もあります。隣地で土地を大きく掘削するような地下工事などは、影響を受ける可能性があると知っておきましょう。

隣地の工事が始まる前の注意点

ここでは、具体的な対処方法をお伝えします。

工事開始前の家屋調査

隣地で影響を受ける可能性のある解体や新築工事が始まるときには、その開始までに対策をとっておかなければなりません。その有効は方法が、工事着手前の現状の確認と記録です。

建物のひび割れや傾きの有無を確認し、写真とともに記録を残しておくのです。ひび割れは、外壁や基礎だけではなく、建物内部の壁や天井なども確認を忘れないようにしましょう。

この対応は、実は隣地の解体や新築工事を行う業者から、事前に建物調査をして記録を残しておかないかと打診があってもよいものです。しかし、この対応を怠る建築や土木業者も多いため、工事の説明の人が訪れたときに建物調査をしておかないのかどうか聞いてもよいでしょう。

工事中や工事完了後の家屋調査

隣地の工事による影響を受けたかどうか判断するためには、工事完了後にも同じ確認作業を行い、変化が出ていないか調べるようにしましょう。このときに、工事前の調査結果(記録)が役立つのです。

工事前の状況から変化が生じていれば、それは隣地の工事の影響だと考えることができます。工事前に調査しておかなければ、この大事な確認ができないことが問題を難しくさせてしまうのです。

また、工事期間が長く、工事規模が大きい場合には、完了後の確認だけではなく、工事の途中でも確認する作業が必要です。工事の途中で既に悪影響が出ていることがわかったときには、その内容次第ではすぐに補修工事をしてもらう必要があります。

そして、それ以上の被害を受けないような対策を提示して頂くよう施工者に求めるとよいでしょう。