住宅購入で損しないための私道(42条2項道路と位置指定道路)の基礎知識

住宅を購入するときには、様々なチェックポイントを確認すべきものですが、そのなかでも不動産の資産価値に大きく影響する項目は、内容をきちんと理解してから購入判断しないと、買ってから大きな損失に気づくこともあります。

今回はそんな大事な項目の1つである道路の話です。特に、新築・中古を問わず一戸建てを購入する人で、購入予定物件に接する土地が私道だと不動産業者から聞いている人なら、ここで私道の基礎知識を学びましょう。私道のなかでも遭遇率の高い「42条2項道路」と「位置指定道路」を中心に解説しています。

道路次第では住宅購入で損をする

住宅購入の際、購入する建物や土地そのものはよく確認しても、その土地に接する土地にまでは意識がいかない人は非常に多いです。そういった人のなかには、知らずに資産価値の低い物件を買ってしまっている人もいるので要注意です。

私道にも種類がある

購入候補の物件が私道に接する土地であるならば、「私道ってなんだろう?」と少しは疑問を持つこともあるでしょう。

この私道の対比で公道という言葉がありますが、公道とは道路法などで定めているわけではありません。道路法には道路の種類として、高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道をあげていますが、一般的にこれらは公道と認識されています。国や都道府県、市区町村が管理している道路は公道と解釈されているわけですね。

私道とは、個人や法人など民間が所有している道路のことです。一般的には「しどう」と読みますが、不動産業者などが買主などに説明するときには、市道との混同を避けるために「わたくしみち」と読み替えていることもよくあります。市道を「しどう」ではなく「いちどう」と読み替えていることもあります。

この私道ですが、その種類は1つではありません。42条2項道路と位置指定道路という2つの種類について知っておくべきです。

私道の種類・条件で不動産の資産価値が変わる

不動産を購入する上で、道路は本当に重要です。私道のなかでも建築基準法で認められていないものであれば、その私道にしか接していない土地には新築することができません。現時点で既存の建物があったとしても建て替えすることもできません。

新築も建て替えもできない不動産ならば、資産価値が非常に低いのは当然のことですね。

新築や建て替えをできるものであったとしても、私道の種類や権利上の問題次第では、やはり資産価値にマイナスとなることもあります。物件を見学した時には、見た目がよく気に入ったものの見えない部分で問題を抱えていたということはよくある話です。

42条2項道路

私道の代表格ともいえる42条2項道路について解説します。

2項道路

42条2項道路とは

42条2項道路を理解するためには、まず次のことを理解しておかなければなりません。

建物を建築するためには、その土地が幅員4メートル状の道路に接している必要があると建築基準法で定められている

しかし、街中を歩いていると、幅員が4メートル未満にもかかわらず、その道路の両脇には住宅が建っている状況を目にする機会はいくらでもあるでしょう。建築基準法で認められていない道路に接する土地に住宅などが建築されていると思われるかもしれません。

実は、幅員が4メートル未満の道路であっても、特定行政庁が指定したものについては建築基準法上の道路だとみなされるのです。特定行政庁とは建築主事のおかれている自治体(自治体の長)のことであり、都道府県のほか、東京23区や大阪市、名古屋市などのような人口の多い都市が該当します。

建築基準法上の道路だとみなされることで、その道路沿いの土地で建築ができるわけです。いわば救済措置のようなものですね。

道路巾(幅員)が4メートルに満たないところをイメージしてみてください。狭い道路のあるところというのは、ずっと以前からそこに街があったようなところばかりです。古くから建物が建ち並んでいるところへ、後からできた法律でもって「これ以降は、そこで建物を建ててはいけません」と言われても困りますよね。

そういった条件のところについて、前述したように建築基準法上の道路だと認めているわけです。但し、古い道路の全てが認められるわけではないため、都度、役所等で確認が必要です。このことを建築基準法の第42条2項で定めていることから、42条2項道路もしくは2項道路と呼ばれているのです。

古くからある市街地ではなく、山を切り開いき大規模開発したような場所では、道路巾が4メートル未満ということはまずないでしょう。建築できない土地の開発などするはずがないですね。

42条2項道路のデメリットと注意点

不動産業者から42条2項道路だと説明を受ければ、建物の新築や建て替えをすることができるとわかります。狭い道路だと心配していた人にとっては1つの安心材料にも思えるかもしれません。しかし、デメリットもありますからこれを把握しておきましょう。

道路後退(セットバック)

42条2項道路に接する物件を購入した場合、新たに建物を建築するときには、その道路の幅員が4メートルになるようにしなければなりません。

例えば、幅員2メートルの道路(42条2項道路)に接する中古住宅を購入し、将来、建替えするときには道路巾の確保のために自分の敷地の一部を道路として提供しなければならないのです。このように敷地の一部を道路として提供することを道路後退やセットバックと言います。

セットバック

幅員を4メートルとするため、道路中心線から両方のサイドに2メートルずつ確保するので、現状の道路が2メートルの幅員ならば、両サイドともに1メートルのセットバックとなります。このように、提供する幅は、現状の道路が2メートルである場合は1メートルであることが多いですが、条件によってはそうとも限らず、もっと提供しなければならないこともあります。

たとえば、道路の反対側が河川であれば、反対側はセットバックできません。よって、一方だけのセットバックのみで4メートルを確保しなければならず、2メートルの道路巾ならば2メートルも下がらなければならないのです。他のケースもあるため、この確認は不動産業者に理由とともに説明を求めるとよいでしょう。

セットバック2

容積率や建ぺい率にも影響がある

道路として提供するセットバック部分は、建物を建て替えするときなどの容積率や建ぺい率の計算の際に敷地面積に含めることができません。購入するときの売買契約書に記載される土地面積ですが、建替えするときには何にも使い物にならないスペースですから、このことをよく理解しておきましょう。

ちなみに、道路として提供する部分には塀や門扉を構築することもできませんし、車庫とすることもできません。

道路がガタガタ

この42条2項道路ですが、建替えするときには各自がセットバックしていくため、将来的に全ての敷地で建替えすれば、道路が4メートルを確保できるため、その時点では見栄えもよく安全性も高くなり、資産価値は向上すると期待できます。

ちなみに、安全性とは火災時の消防車の進入のし易さのことです。道路が狭い上に古い木造住宅の多い地域では大規模火災が生じてしまうことがあります。

将来の資産価値向上について触れましたが、各敷地で一斉に建替えするわけではないため、現実は厳しいでしょう。42条2項道路を歩くと所々でセットバックした家があって、道路幅が一定ではないことに気づくことでしょう。ガタガタになっている印象を受けることも少なくありません。

また、セットバックすれば面積が減るからしたくないと考えて、建替えせずにリフォームする住宅も多く、なかなか道路環境の整備が進んでいない現状があります。

道路の所有者

もう1つ気を付けておきたいことは、道路の権利の問題です。私道は個人や法人が所有者となっており、都道府県や市区町村が所有するものとは異なります。

所有者がその道路に勝手に何かを構築することはできませんので、基本的には通行を妨害される心配はありませんが、何かのときに道路の所有者に承諾を求める必要が出てくることがあります。その何かとは、たとえば建物を建築するときなどの配管工事に伴う掘削工事の許可です。

他人が所有している土地(道路)であるため、勝手に工事をせず承諾を得るのですが、所有者によってはすぐに承諾してくれないことがあります。昔は、金銭を求めることもありました(今でもあるかもしれない)。

また、通行を妨害するようなことは所有者でもできないと書きましたが、そういうルールを守らずに身勝手なことをしてしまう人もいます。

位置指定道路

次に位置指定道路について説明しましょう。

位置指定道路

位置指定道路とは

位置指定道路とは、建築基準法において道路として認めているもので、政令で定める基準に適合するもので、特定行政庁から道路として位置の指定を受けたものです。建築基準法の42条1項5号で規定されています。道路の幅員は4メートル以上です。

この位置指定道路は不動産会社が申請して、指定を受けていることが多いです。その理由は、ある程度のまとまった大きさの土地を開発して、新しい道路を作り、分譲していくことが多いからです。たとえば、駐車場だった土地に道路をつくり、何棟かの建売住宅を分譲するといったケースが見られます。

開発前の土地

 

開発後の位置指定道路

 

位置指定道路は前述の42条2項道路と異なり、幅員が4メートル以上ありますから、見栄えもすっきりしており、良い住宅地のように見えることが多いです。42条2項道路に比べれば心配材料は少ないですが、デメリットや注意点もあげておきましょう。

位置指定道路のデメリットと注意点

位置指定道路でも42条2項道路と同じく道路の所有者に関してデメリットがあります。その分譲地を開発した不動産会社が道路を所有し続けていることもありますが、多くの場合、その道路に接する土地の所有者が道路を分割して所有していたり、道路を共有していたりします。

道路を分割して所有するということと道路を共有することの違いがわかりづらいですね。見た目では、1つの道路なのですが登記上はいくつかの土地に区切って(分筆して)いることがあり、分筆された1つ1つの土地をその部分に接する土地の所有者が所有しているパターンが、道路を分割して所有するということです。

ただ、自分の土地の目の前の道路部分を所有するとは限らず、離れた場所をお互いに持ち合うというパターンもあり、このケースはなかなかややこしいものです。

また、道路を共有する場合は、その道路に接する土地の所有者が全員で1つの土地(1筆の土地)を共有しています。たとえば、道路に接する土地の所有者8人が8分の1ずつ共有するといった状況です。

こういったことを理解するのも難しいですね。いずれにしても、道路の所有者が複数であるわけで、道路の工事など管理上の問題が生じたときに対応について話し合いが必要になったり、話がまとまらずに対応に苦慮したりすることもあります。

42条2項道路のところでも書きましたが、位置指定道路でも掘削工事などで問題が起こることがあることは理解しておきましょう。トラブルに遭遇する率は決して高くありませんが、ありうるということですね。
私道の基本的な話として、42条2項道路と位置指定道路について解説しましたが、どのようなものか理解できましたでしょうか。該当する物件を購入するときは、理解してから購入判断しましょう。

 

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