吹抜けの家のメリット・デメリットと注意点

マイホームを注文建築で建てる人にとって、住宅のプランを検討する作業は楽しいものです。いろいろな希望を出し、工夫しながら理想を創り上げていくのは、時間や手間がかかるものの前向きでいいですね。

注文住宅のプラン、間取りを検討するとき、吹抜けのある家にしたいと考える人も多いでしょう。吹抜けとは、上階の床(下階の天井)を無くしたもので、例えば1階と2階のあるスペースが同一の空間となったものを言います。

吹抜けは、階段や玄関、そしてリビングで採用されることが多いですが、一度、吹抜けを見てみると吹抜けのあるリビングに憧れるというのもうなずけます。そんな吹抜けのある家には、メリットもデメリットもありますので、これらを把握したうえで実際にあなたの家に吹抜けを採用するかどうか考えてみてください。

< 吹抜けのメリット >

  • 開放的(狭くても広く見える)
  • 明るさ(2階部分の窓からの採光)
  • 家族(特に子供)の存在・動きを感じやすい

住宅に吹抜けを設けた場合のメリットとして、誰もがわかっているのは開放感です。建物内部の空間が広く感じられることが良い特徴ですから、建物面積が大きく取れない住宅で開放感を求めるならば、吹抜けも選択肢として考えられます。

この開放感とも通じるメリットとして、明るさがあります。2階の窓から1階への採光があるため、非常に明るくなります。リビングでもそうですが、玄関でも上階に窓を設けて採光を得れば、お昼は照明を利用しなくても明るい玄関になります。

玄関と階段が同一空間にあり、そこを吹抜けにすれば、玄関も階段も明るく開放的でいいですね。

もう1つの吹抜けのメリットは、家族の存在や動きを感じやすいことです。2階にいる子供の声や物音が聞こえるのは安心感もあります。2階にいるときに1階にいる高齢者の物音や声が聞こえるのも安心できます。安心や温かみを感じられるのも大きなメリットです。

気になるのは吹抜けのデメリットの方ですね。

< 吹抜けのデメリット >

  • 冷暖房効率の悪さ(光熱費が高くなる)
  • 匂いや音が上下階で伝わりやすい
  • 2階の床面積が減る
  • 照明の交換や窓拭きが困難
  • 構造的な弱さ

最も注目される吹抜けのある家のデメリットは、冷暖房効率の悪さです。空間が非常に広いため、冷暖房が効きづらいです。当然ながら、光熱費も高くなってしまいます。電気代の高騰が問題にもなっていますが、このことが吹抜けのデメリットに拍車をかけています。

吹抜けの上階部分は人がいるスペースではないものの、冷暖房の使用においては一緒に室温を管理せざるをえず、効率が悪いですね。

冷暖房効率の悪さを軽減するためには、建物の断熱性能を高めたいところです。新築住宅では、建物を断熱材でくるんで断熱性を確保するのですが、この断熱工事の施工品質が悪ければ、断熱性能が落ちてしまいます。よって、注意点としては、新築工事の途中において断熱工事の施工を細かく住宅検査しておく必要があります。

次に吹抜けのある家でデメリットと言えるのが、匂いや音の問題です。メリットのところで、家族の存在や動きを感じられることをあげましたが、このことはデメリットにもなりえることです。家族にあまり聞かれたくない会話やテレビの音が上下階へ聞こえてしまいます。

また、匂いもそうです。音や匂いの問題は、一度気になりだすとずっとストレスを感じる人も少なくないため、家族の性格や考えもよく考慮して吹抜けを選択するかどうか検討すべきでしょう。親にとってはよくても、子供にとってはストレスになるということもありますから、注意したいですね。

吹抜けのデメリットとして3点目は床面積が減ることです。吹抜け箇所の2階の床がないわけですから、その部分を居室などにする間取りと比べて有効面積が減ってしまいます。建物面積が大きくないときに開放感を得られて広く見せることができるというメリットをあげましたが、実際の有効面積が減ってしまうのはマイナス要素ですね。

建物の大きさや家族計画(家族が少なくて面積を削ってもよいという考えもある)にもよりますから、広い視野で検討しましょう。

4点目のデメリットは、照明の交換や窓拭きが大変だという点です。吹抜けスペースの天井に照明がある場合、交換は本当に大変です。長持ちするLEDの利用はお奨めしたいですが、それでも交換するときはきます。また、窓拭きも困難なものになりますね。上階からの採光が大きなメリットですから、窓を無くすわけにはいきません。吹抜けを採用するならば、窓拭きをどうするのか考えておきましょう。

吹抜けのある家では構造対策が必要

< 吹抜けの最大のデメリットは構造的な弱さ >

そして、最後の吹抜けのデメリットとしては、構造的な弱さがあります。デザイン性を重視しすぎる設計者もこの罠に陥ることは少なくなく、壁のひび割れなどの相談を受けてアネストが住宅診断(ホームインスペクション)を行った住宅でも吹抜けが問題になったことは何度もあります。

実は吹抜けの最大のデメリットは、この構造的な問題にあると言えます。

建物を柱で支えているイメージをもっている人もいますが、実際には壁や床も構造的に非常に重要なものです。床は水平方向の揺れへの耐力を考えるうえで非常に重要です。地震の揺れだけではなく、台風などの強風の振れでもそうです。

床の配置によっては、ねじれやすくなるため、設計するうえで十分に検討しなければならないのです。完成してからしばらくして、壁面にひび割れ(亀裂)が生じてしまい、心配される人も多いです。

営業マンなどが、「建築確認申請で許可がおりれば問題ないですよ」などということがありますが、法律の基準を満たせば問題ないとする判断は間違っています。ひび割れなどの問題が生じた吹抜けのある住宅の全てが、建築確認申請を経て完了検査でも合格しているものですから、注意が必要です。

吹抜けのある家を建てるならば、吹抜けスペースの周りの床の補強などの設計上の工夫・対策をとることや、間違いのない施工品質といったチェックはかかせないものです。

 

執筆者:専門家

 

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