建売住宅は欠陥工事が多い。失敗しないための購入時の対応策

建売住宅を購入しようとしているときに、「建売は欠陥が多いからやめた方がいい」と周囲から言われた人も少なくないようです。言われなくても、そのようなイメージを抱いている人も多いですし、テレビなどで建売住宅の欠陥特集を見た人もいることでしょう。

建売住宅には欠陥が多いのか?という疑問への回答と実際にどういった欠陥工事が見つかるのか紹介しますので、建売住宅を購入検討するときの参考にしてください。もちろん、前提として、全ての建売住宅がダメだというわけではないことを理解しておきましょう。

1.建売住宅には欠陥住宅が多い

建売住宅に欠陥が多いという話は本当でしょうか?

欠陥とは、瑕疵とも言い換えられますが、確かに建売住宅の多くには何らかの瑕疵が見つかることが多いです。このことは、2003年から非常に多くの建売住宅に対してホームインスペクション(住宅診断)を実施してきたアネストの経験からも間違いないと断言できます。

しかし、欠陥にも程度があります。構造耐力上主要な部分に関わる重大な瑕疵に限定して言えば、それほどまでに多いわけではありません。欠陥の程度について分けて言えば、実感値は以下のようになります。

  • 構造耐力上主要な部分に関わる重大な瑕疵
    5%以下の物件に存在する
  • 構造耐力上主要な部分に関わる中程度の瑕疵
    5~15%程度の物件に存在する
  • 構造耐力上主要な部分に関わらないが、機能・性能に関わる瑕疵
    25~35%程度の物件に存在する

他にも細かな指摘を含めれば、90%程度の建売住宅で何らかの問題が見つかっています。この細かな指摘は、何ら対処しなくても損害や影響を受けることがないものもあります。

上の実感値を見て、建売住宅に欠陥が多いと考えるか、思ったより少ないと考えるかは人それぞれではないでしょうか。5%以下とはいえ、重大な瑕疵がそれだけあるのは多いとも思えますし、中程度の瑕疵が5~15%程度あることは少ないと感じることはできないかもしれません。

ただ、誤解してほしくないこととして、たまにほとんど全ての建売住宅に欠陥があるという話です。欠陥を広範囲にとらえればそうですが、それが「構造耐力上主要な部分に関わる重大な瑕疵がほぼ全ての建売にある」というわけではないことです。

きちんとケアして購入すれば問題ない物件が多いと理解しておきましょう。

2.建売住宅でよく見つかる欠陥工事

建売住宅の購入で欠陥住宅を掴まないために有効な方法は、よくある欠陥工事の内容を知って、同じような問題が購入したい物件にないか現場できちんと確認することです。そこで、多くの建売住宅のホームインスペクション(住宅診断)の実績と経験から、よく見つかることがある欠陥の事例を紹介します。

ここで紹介したチェックポイントを購入する前に確認しておくことが理想ですが、既に購入しているなら、できるだけ早いタイミングでこういった点をチェックし、問題があれば早期に売主へ補修を要求した方がよいでしょう。

完成後に見つかる欠陥

2-1.完成後に見つかるもの

完成後の建売住宅のホームインスペクション(住宅診断)で見つかる欠陥工事のうち、細かなことも挙げればきりがないので、構造耐力上主要な部分に関わる中程度以上のものと機能・性能に関わる瑕疵のみをご紹介します。ここに挙げている事例は、決して稀に見つかるというものではなく、よく見つかることがあるものです。

まずは、完成物件で見つかることが多いものから紹介します。

  • 断熱材(床下・小屋裏)のはがれ・隙間
  • 開口部・外壁継ぎ目のシーリングの施工忘れ・雑
  • 基礎の著しいジャンカ・ひび割れ
  • 排水管の勾配不足・固定忘れ
  • 配管による土台の著しい欠損(貫通)
  • アンカーボルトの土台外れ

基礎の著しいひび割れが新築時点で生じていることがあるのかと疑問を持つ人もいるかもしれませんが、実際に見つかっています。床下へ潜って調査をした際に、基礎の底盤(底の部分)に見つかることもありますが、これはその状況次第では重大な問題であることも考えられます。もちろん、基礎立上りであっても著しいひび割れやジャンカは適切な補修等の対応が求められます。

また、配管するために土台(構造上、重要な木部)に穴を開けて給排水管を通していることがあります。その穴(欠損)の位置や大きさなどによっては、重大な欠陥と言えるものもあります。

アンカーボルトが土台から外れてしまっている場合は、残念としか言いようがありません。建築業者も外れていることに気づいていながらそのまま工事を進めているはずですから、信用できませんね。

上のなかで最もよくあがる指摘事項は断熱材です。完成時点で断熱材が落ちていたり、隙間だらけだったりして本来の性能をぜんぜん発揮できていないひどい状況の物件も見かけます。

開口部・外壁継ぎ目のシーリングについては、雨漏りを防ぐ大事な部分ですから、こういうところも購入前にきちんとチェックしておいてほしいポイントです。

ここに挙げていないことで細かな指摘としては、玄関やポーチなどのタイルの浮き、室内扉やサッシのがたつき・動作不良、収納棚の動作不良、配線の整理忘れ、著しい床鳴りなどがあります。

建築中に見つかる欠陥

2-2.建築中に見つかるもの

前述のように完成物件でも重大な指摘がよくあがっているのですが、実は建築中に確認できる範囲でも多くの指摘があがっています。完成後では確認できない点も多いので、これから建築する物件や建築中の建売住宅を購入するのであれば、以下で紹介するチェックポイントも確認しておきましょう。

  • 基礎配筋のかぶり厚の不足・補強筋の不足
  • アンカーボルトの芯ずれ
  • 土台の著しい欠損
  • 構造金物の設置忘れ・種類の誤り
  • 断熱材(外壁内)の隙間・設置忘れ
  • 防水シートの破れ・施工順の誤り
  • 構造用合板の欠損・釘のピッチ不足

基礎配筋の指摘は、コンクリートを打設する前に現場でチェックしておかないと現実的に難しいです。コンクリート打設後でも、専門機材を使用することである程度の確認をする方法はありますが、できればコンクリート打設前に確認しましょう。かぶり厚の不足は本当によく見つかる指摘です。

完成物件でもアンカーボルトが土台から外れている建売住宅を見かけることがありますが、建築中ならば外れていないまでも、芯ずれ(本来は土台の中央に配置すべきがずれている)しているものが見つかることもあります。その状況に合わせた補修・補強を検討すべきことも多いです。

屋根まで上棟して構造金物を取り付けた段階でチェックするときは、構造金物の設置忘れや使用されている商品の間違いがないか確認しましょう。金物は非常に大事な役割を果たしますが、こういった個所を売主や建築業者が委託している第三者機関では見落としていることも多いです(ごく一部しか確認していないことが多いです)。

断熱材や防水シートの指摘が上がることは非常に多いです。全ての建売住宅で入念にチェックすべき事項だと言えるでしょう。すぐに構造耐力に関わる影響がでるわけではないですが、建物の耐久性や生活する上での快適性に大きく影響することがある指摘事例です。

室内側の壁材や床材(構造用合板)もきちんと確認しておきたいチェックポイントです。乱雑に釘などが打たれている現場は多く、完成後にひび割れなどの症状を起こしやすくしていることがあります。

3.プロに任せてしまうのが現実的な対応策

建売住宅でよく見つかる欠陥工事の指摘事例を紹介しましたが、これらを全て買主が自ら確認するのは容易ではありません。どうしても建築に関する専門知識や経験が必要になります。書籍やインターネットで勉強してできる限り自分で確認するのもよいですが、大きな買い物ですから、ホームインスペクション(住宅診断)をプロに任せてしまうのも1つの有効な対応策です。

建売の完成物件を購入するのであれば、床下や屋根裏の調査も依頼し、これから建築する物件や工事中の物件を購入するのであれば、工事途中も検査してもらうことをオススメします。