新築の建売住宅の引き渡しの流れと基礎知識・注意点

新築住宅(建売物件)を購入して引渡しを迎えるにあたり、初めてのことで不安を感じている人は多いでしょう。引渡しのときから大きな金額の住宅ローンを組んで購入するわけですし、当然のことではないでしょうか。

引渡しに際してわからないことを理解し、注意点も知って対策しておくことで、住宅トラブルを未然に防ぐことができます。ここでは、新築の建売住宅を対象として、引渡しに関する基礎知識と引渡しの流れや注意点を解説しています。

1.引渡しとは?

そもそも引渡しとは何でしょうか?

知っていて漠然とした感じになっている人も多いのではないでしょうか。所有権を移転することが引き渡しだと思っている人もいますが、それはちょっと違います。

引渡しとは、買主がその住宅を占有できるようにすることです。買主が自由に家具などを運び入れたり、居住したりできるようになること、つまり使用できることです。実際には、売主から買主へ鍵を引き渡すことでそれを実現していることから、鍵の引き渡しと説明されることもあります。

所有権を移転することが引き渡しだと説明されることがあっても、それは少し違って、所有権の移転登記を申請するときと同時に引渡しを行うことが一般的な取引の仕方です。なかには、所有権の移転登記が完了しているにも関わらず、引渡しをしていない住宅もあります(良いことではありませんが)。

2.新築住宅の引渡しの流れ

はじめての引き渡しでもっとも不安になることは、流れがよくわからないという点です。最も質問が多いです。引き渡し日の前後の流れと引き渡し当日の流れにわけて詳細を説明します。

2-1.引渡し日の前後の流れ

まずは引き渡しの前後の流れを説明します。ここで書いているのは、あくまでも新築の建売住宅ですから、注文建築や中古住宅ではこれとは少し違った流れになるので注意してください。

  1. 手付金の支払いと売買契約
  2. 住宅ローンの申し込み
  3. 住宅ローンの承認
  4. 建物の完成
  5. 売主による社内検査
  6. 完成検査(内覧会)に同行する専門家の手配
  7. 買主による完成検査(内覧会)
  8. 補修工事(手直し工事)
  9. 補修後の再確認
  10. 現在の自宅の解約通知
  11. 登記手続き等の手配
  12. 残代金の資金準備
  13. 住宅ローンの契約(金銭消費貸借契約)
  14. 火災保険の加入手続き
  15. 残代金の支払いと引渡し
  16. 電気・ガス・水道の利用届け
  17. 電話・インターネットの手続き
  18. 入居(引越し)
  19. 住民票の転入・転出届け

※上のなかで、買主が自ら動く必要のあるものが赤字のものです。

このように順を追って項目を挙げていくとやるべきことが多くて少しうんざりするかもしれません。それだけ、売買契約から引き渡し、入居まではやるべきことや考えるべきことが多くて大変なのです。

完成済みの新築住宅を購入したのであれば、上の「4.建物の完成」と「5.売主による社内検査」はありません。「7.買主による完成検査(内覧会)」は任意ですが、引き渡し後に施工不良で後悔する確率を減らすために利用をオススメします。専門家に同行依頼する方法も効果的です。

また、上の「10.現在の自宅の解約通知」~「14.火災保険の加入手続き」は、その取引によって順序が入れ替わったり同時進行したりすることがあるので、不動産業者とよく相談して進めなければなりません。

2-2.引渡し当日の流れ

次に、引き渡しの当日の流れを説明します。これを読んでおけば、引き渡し日にすることもイメージできるでしょう。

  1. 登記申請書類の作成・確認
  2. 住宅ローンの融資実行
  3. 残代金と諸費用の支払い
  4. 鍵の引渡し
  5. 関係書類の受け取り
  6. 登記申請(司法書士が行う)

諸費用は住宅ローンの融資金から差し引かれることが一般的ですが、諸費用相当額の売買代金が必要になることにかわりませんから、売買代金の残金と諸費用相当額の資金を準備しておく必要があります。

このなかの関係書類とは、以下のものです。

  • 保証書
  • アフターサービス規準書
  • 住宅瑕疵担保責任保険の付保証明書
  • 建築確認申請書・確認済証・検査済証
  • 設計図書(図面)
  • 住宅設備機器等の取り扱い説明書・保証書

新築の建売住宅では必ずあるものなので受領して大切に保管しておきましょう。

上の書類のうち、住宅瑕疵担保責任保険の付保証明書と検査済証は引き渡し当日にはまだ間に合っておらず、後日にもらえることが多いです。また、所有権移転後の登記識別情報、登記事項証明書は引き渡し日にもらえることはないので、確実に後日になります。

新築建売住宅の引き渡しの基礎知識

3.新築建売住宅の引き渡しの基礎知識

建売住宅の引き渡しの流れも理解できたところで、次に引き渡しに関わる基礎知識を解説します。不動産会社の担当者に聞いてもよくわからないときなどに、きっと役立つでしょう。

3-1.引渡しを行う場所

引渡しを行う場所に決まりがあるわけではありませんが、多くの場合は金融機関で行います。なぜなら、大きな金銭が動くからです。住宅ローンの融資実行(借入金の受け取り)と残代金の支払いをする場所としては、金融機関が便利ですね。安全でもあります。

住宅ローンを利用しない場合、司法書士事務所や不動産会社で引渡しをするケースもありますが、基本的には金融機関で実行した方がよいです。不動産会社からもそのように案内されるでしょう。

引渡しを購入した物件の現地で行うと思っている人もいますが、そうではありません。鍵の引渡しを受けてから、その日のうちに現地へ行って建物の中へ入ること(使用すること)は可能ですが、現地で引き渡しすることはほとんどないでしょう。

但し、引渡しに際して現地で住宅の状況を確認することはあります。同日に、補修工事をした箇所が完了しているか、敷地境界の位置がどこであるか等の説明を受けることもあるからです。ただ、境界や住宅設備機器の説明などは買主による完成検査(内覧会)のときに済ませておくことが多いです。

3-2.買主が引渡し日に準備するもの

引き渡し日のときに買主が準備しておくものを紹介します。

  • 身分証明書
  • 住民票
  • 印鑑(実印・認印・銀行印)
  • 印鑑証明書
  • 残代金
  • 諸費用(仲介手数料・登記費用・印紙税・固定資産税等の精算金など)

但し、前述したように諸費用は融資金から差し引くことが一般的です。不動産業者に準備しておくべき金額を前もって確認し、できれば計算書をもらうことをオススメします。

また、引き渡し日に必要な印鑑の種類は不動産業者に確認しておきましょう。取引の流れの相違などによって、必要なものが異なるからです。住宅ローンの契約(金銭消費貸借契約)と引渡しが同日の場合は、そのときに実印と印鑑証明が必要ですが、別日の場合には必要ないこともあります。

3-3.引き渡しでお礼は必要か?

新築住宅の買主がよく悩んでいることの1つに、引渡しに際して何か菓子折りなどを用意しておくべきかというものがありますが、別に必要はありません。注文建築では、確かにそういうケースを見かけることもありますが建売住宅ではほとんどありませんし、そのような慣習のようなものもありません。

もちろん用意してはいけないということではありませんし、気持ちの問題でもあるので用意されても構いませんが、基本的には必要ないものだと理解しておいてよいでしょう。

4.建売住宅の引渡しに関する注意点

新築の建売住宅と引き渡しに関することでトラブルが起こっているケースは決して少なくありません。その多くは、買主のミスによるものではないのですが、望んでいなくてもトラブルに巻き込まれることはあるので、ここで紹介していることには十分に注意を払っておきましょう。

4-1.未完成の住宅の引渡しはダメ

本当に多くの人から、未完成住宅の引き渡し問題について相談を受けてきました。建築工事が遅れて完成予定日までに完成できず、引渡しが受けられないという住宅は驚くほど多く、どうしてそのような無理な工期を組んでいたのかと不思議になることもあります。

工事・完成が遅れたのであれば、引き渡し予定日の引渡しもできなくなることが多く、引き渡し日の延期について売主と買主が話し合うことになります。しかし、売主が売主の都合だけで完成していない住宅を無理矢理に買主へ引き渡してしまおうとするケースが後を絶ちません。

引渡しとは名ばかりで、実際には売買代金の全額を支払うようにだけ求めてきて、引渡しを受けられないという事態が多いです。

実際の引渡しと代金の支払いは同日にすべきことですから、売主からそのような申し出があってもきっぱりと拒否するようにしましょう。完成するまでは絶対に代金を支払わないと意思表示すべきです。

4-2.引越し日の設定にもゆとりが必要

前述のように、完成日や引き渡し日が遅れてしまうことはよくあることなので、買主も自衛しなければなりません。それは、引越し日にゆとりをもらせることです。引き渡し予定日の翌日や3日後に引越し業者を手配したり、賃借している住居の退去を予定したりすると、万一の引越し日の延期対応が難しくなってきます。

引き渡し予定日と引越し日の間には、10日以上はあけておくとよいでしょう。そして、完成日が近づいてきた段階で工事が遅れていないか売主に早めに確認してください。遅れているようなら、引越し日の変更等を考えるためです。

4-3.完成が遅れたときの注意点

建物の工事が遅れて完成日や引き渡し日が延期になったときの注意点があります。工事が遅れる物件の大半は、遅れた焦りから現場が急かされており、雑な工事、手抜き工事が増えてしまいます。これは、建築業界においてずっと昔から同じ状況で、繰り返される過ちの1つです。

その結果、施工ミスのある住宅を引き渡された買主が被害を受けることになってしまいます。

そこで、買主は前述したように引越しスケジュールにゆとりをもたせ、且つ日程変更に柔軟に対応できるようにしておき、現場を必要以上に焦らさないことです。

そして、完成検査(内覧会)には専門家を同行してしっかりチェックしてもらい、施工ミスの補修を売主へ求めることです。もし、工事が遅れていることに早めに気付いたならば、その工事途中でも検査に入ってもらう方法がありますから検討するとよいでしょう。