住宅購入のキャンセル及び解約の可否と注意点

マイホーム探しをしていて買いたいと思う住宅に出会えば、不動産購入申込を行い、さらに売買契約へと取引が進んでいきます。しかし、その取引の流れのなかで買主の考えが変わり、購入を中止したいと考えることもあります。住宅購入者のなかで、購入中止を検討したことのある人は実は非常に多いですから、誰もが経験する可能性のあることです。

購入中止といっても、不動産購入申込をしただけで売買契約をする前に申込をキャンセルしたいということもあれば、売買契約を締結済みだが契約を解除したい(解約したい)ということもあります。申込のキャンセルや解約は意味も異なりますから、以降ではそれぞれについて解説します。

住宅購入の基本的な流れ

住宅購入のキャンセルや解約について理解するために、基本的な住宅購入の流れを把握しておく必要があります。以下は、建売住宅や中古住宅、新築マンションを購入するときの一般的な流れです。

  1. 物件の見学
  2. 不動産購入申込と申込金の支払い
  3. 住宅ローンの事前審査の申込
  4. 住宅診断(ホームインスペクション)を実施
  5. 重要事項の説明
  6. 売買契約の締結と手付金の支払い
  7. 住宅ローンの本申込
  8. 売買代金の残金決済と引渡し

以上の流れですが、細かなことは省略しており、主だった項目についてのみ挙げています。取引によっては、住宅ローンを利用しないこともありますから、その場合は以上のうち「3.住宅ローンの事前審査の申込」と「6.住宅ローンの本申込」はありません。

「2.不動産購入申込と申込金の支払い」で支払う申込金は10万円前後であることが多いですが、取引によっては申込金が無いこともあれば、数十万円であることもあります。

「5.売買契約の締結と手付金の支払い」で支払う手付金は取引によって大きく異なります。売買代金の5~10%ということもあれば、割合に関係なく、50万円や100万円とすることもあります。

取引の流れを把握したうえで、次は不動産購入申込のキャンセルについて見ていきましょう。今現在、売買契約を締結後の解約について悩んでいる人は、次を飛ばして「売買契約後の解約の場合」を読むとよいでしょう。

不動産購入申込のキャンセルの場合

不動産購入申込とは、特定の不動産を買いたい旨を買主から売主に対して意思表示することです。一般的には、不動産購入申込書に署名・押印して売主へ提出します。この不動産購入申込をキャンセルする場合について解説します。

不動産購入申込のキャンセル

不動産購入申込は売買契約ではない

不動産購入申込は、前述の通り購入したいという意思表示ですが、売買契約ではありません。買主が買いたいと売主に伝えて(購入申込して)、それに対して売主が売ると返事すれば、その次に売買契約へと取引が進んでいくものです。

契約行為は口頭だけでも成立するといった話を聞いたことがある人も多いでしょう。そういった人から何度も相談を受けます。確かに民法においてそのように規定されているものの、不動産の売買においては売買契約の成立のためには売買契約書にて契約することが必要だとされています。

不動産購入申込は売買契約ではないということを覚えておきましょう。

不動産購入申込のキャンセルは可能か

不動産購入申込をした後に買主がキャンセルすることは可能です。申込後、家族で話し合ったり、両親に相談したりした結果、中止したいと考えが変わったときにはキャンセルすればよいでしょう。ちなみに、住宅購入をこの段階でキャンセルするとき、キャンセル理由は特に問題となりません。

よく考えたら予算的に厳しいということでも構いませんし、単純に気が変わったというだけでもキャンセル可能です。

不動産購入申込をキャンセルすれば申込金は返金される

不動産購入申込の際には申込金を支払うことが一般的です。この段階で住宅購入をキャンセルしたときは、支払済みの申込金は全額返金されます。本当に返金されるのか心配して質問を受けることもありますが、宅地建物取引業法にて規定されていることですから安心してよいでしょう。

申込金は手付金や契約金といったものではなく、ただの預り金です。

申込金を返金しない不動産会社に要注意

いろいろな不動産会社がおり、またいろいろな営業マンがおりますが、なかには住宅購入の申し込み時に支払った申込金はキャンセルすると返金できないと説明する業者もいます。

しかし、その説明は誤りです。しかも、知識が無くて誤った説明をしているのではなく、多くの場合において返金しなければいけないことを知っていながら、虚偽の説明をしています。なぜなら、不動産業界で働くものであればだれもが当然に知っているような基礎知識だからです。

堂々と返金を請求し、それでも返金しないようであれば、監督官庁(自治体や国交省)に連絡すれば、すぐに返金されるでしょう。

売買契約後の解約の場合

次に住宅購入の流れの中で、既に売買契約を締結した人が対象となるキャンセルについて説明します。既に売買契約をしているわけですから、契約解除(解約)ということになります。

売買契約の解約

売買契約後の解約にも、そのタイミング等によって大きな違いがあります。以下が解約の種類として一般的に考えられるものです。

  • 手付放棄による解約と手付金の倍返しによる解約
  • 契約違反による解約(違約金を支払う必要あり)
  • 融資利用の特約による解約
  • 売主と買主の合意による解約

それでは、それぞれの解約と買主の負担について以降で説明します。

手付放棄による解約と手付金の倍返しによる解約

売買契約後に、買主の都合によって解約したい場合、手付解除による解約を行うことが多いです。売買契約の締結時に支払った手付金を買主が放棄することで解約するというものです。つまり、売主は受け取った手付金を売主のものとするということです。

仮に手付金が100万円であるならば、その100万円を買主が放棄するということです。契約後、買主が予算の都合や両親の反対など、何らかの理由でキャンセルしたいときにとる手段です。

一方で、売買契約をした後に売主が売却を中止したいと考えることもあります。買主がキャンセルすることに比べれば、あまり多くないことですが、稀にそういったこともあります。このときは、売主は買主より受け取っている手付金を買主へ返金し、かつそれと同額を売主へ支払わなければなりません。

手付金が100万円であれば、その100万円を含めて総額200万円を売主から買主へ支払う形となり、手付金の倍返しと言われています。

契約違反による解約(違約金を支払う必要あり)

売買契約においては、当然ながら様々なことが売主と買主の間で取り決めされています。契約の当事者もそれほど意識していないことが多いですが、大事なことがたくさん決められているのです。その契約内容に売主もしくは買主のいずれかが反して(違約して)解約することになった場合、違約した方が違約金を支払う必要があります。

例えば、契約によって取り決めた引渡日に引渡しできず、それによって解約するという場合や、買主が予定していた残代金(融資額を除く)を用意できずに購入できない場合などが、これに該当する可能性が高いです。

こういった理由に関わらず、買主や売主が売買契約の履行に着手した後に購入を中止したいという場合、この契約違反による解約に該当することが一般的です。

ちなみに、違約金は売買契約書に明記しているはずですから、よく確認しておきましょう。

融資利用の特約による解約

住宅を購入する人の多くは、住宅ローンを利用します。金融機関から購入資金について融資を受けるということですが、その融資が受けられない場合、買主は物理的に購入できないことも多いですね。売買契約後に融資審査で融資を受けられないとわかったときに買主を保護するため、融資利用の特約(住宅ローン特約とも呼ばれている)が契約には付いているはずです。

融資を受けられなかったときには、この特約による契約解除となり、買主が売主へ支払い済みの金銭(手付金等)は全額返金されます。ペナルティはないということです。

売主と買主の合意による解約

売買契約の解除(解約)のなかには、前述したケース以外に、売主と買主が話し合った結果、双方の合意の下で前述のいずれにもよらない形での解約が成立することもあります。たとえば、契約の一部を履行していたものの、違約金の支払いを求めることなく、解約するという場合です。

売主・買主の双方に過失等があるときなどは、話し合って解決を図ることもあるのです。

住宅購入を進めていくなかで、一度は買いたいと考えた物件であっても考え直してキャンセルしたいと思う人は少なくありません。そのとき、取引のどこまで進んでいるのかによって対応が異なりますから、状況をよく把握しなければなりません。

 

売買契約をした後であれば、キャンセルする理由・状況によって金銭負担が異なりますから、慎重に対応しましょう。

 

○専門家に依頼するなら