住宅ローン:10年固定金利が変動金利よりも低金利に

マイナス金利政策により住宅ローンの金利の低下が一層大きくなりました。変動金利では今までの水準は0.725%程度が最優遇金利でしたが、最近では大手メガバンクでも0.625%という未だかつてないレベルでの優遇金利を提示してきています。更に金利の低下が顕著なのが10年固定金利型などの選択型固定金利です。

この3月での大手銀行の10年固定型金利を調べてみたところ、下の表の通りとなりました。

10年固定金利の住宅ローン

通常、変動金利よりも固定金利は高い設定となりますが、このマイナス金利の影響により10年固定型の金利は銀行によっては変動金利を下回る利率となっています。これは変動金利と固定金利の基準となる金利が違うのが原因なのですが、異常事態とも言えるでしょう。

住宅ローンの借換えについてニュースで盛んに報道されるようになっている原因ですね。

さて、マイホームをこれから購入される方として、これはいい状況と言えます。当然負担する金利は低い方がいいのですから。しかし、注意しなければいけないところも、もちろんあります。

経済は循環ですので、低金利はいつまでも続くものではないという事です。

住宅ローンは35年間など、返済期間が長く続きます。

今、この時点で金利が低いからと言って、その低金利の恩恵を全期間受けるためには全期間固定金利を選択する以外にありません。全期間固定金利の代表格であるフラット35であれば、当初0.95%で一定期間後1.25%程度になるものが多いようです。さすがに全期間を固定するには変動金利の倍以上の金利を負担しなければなりません。

変動金利は半年に1度金利の見直しをし、返済額は5年毎に見直されます。返済額についていえば、どれだけ金利が上昇していたとしても125%以上上昇させないルールとなっていますので、返済額が急激に上がる心配はありませんが、返済期間が予定よりも長くなるリスクがあります。

そこで今、変動金利よりも金利の低くなる可能性のある10年固定を選ばれる方もいらっしゃるでしょう。しかし、10年固定は11年目の金融情勢によって金利・返済額が決まりますので、急激に返済額が上昇する可能性があるという点を忘れないようにしましょう。返済額が急激に上昇するという事は生活に直接打撃を与えることになります。

例えば、返済期間がそもそも10年である場合や、10年目にはある程度返済の目処が立っているケースでないと、潜在的なリスクは意外と高いかもしれません。このような低金利はあくまで異常事態なのであって、返済期間中ずっと続くものではないと理解をしておかなければならないでしょう。また、返済の仕方によっては変動金利よりも10年固定型の方がリスクは高くなるかもしれない点を忘れないようにしましょう。

岡崎謙二

<執筆者>
・執筆者:岡崎謙二
・所属会社:ハウスネットギャラリー関西
・主な資格:CFP、住宅ローンアドバイザー、宅地建物取引士

<執筆者のプロフィール>
FP業界のパイオニア。大手企業や公務員団体など多くの顧問をしており年間100件以上の住宅相談を受ける。
また2016年4月より住宅に特化したFPサイト「ハウスネットギャラリー関西」を立ち上げる。