住宅ローン控除のための耐震基準適合証明書の取得方法と注意点

住宅を購入する人の多くが関係する住宅ローン控除(住宅ローン減税ともいう)をご存知でしょうか?所得税が控除されるという住宅購入者にはうれしいメリットを受けられる制度ですが、知らないと控除を受けられないこともあるため、注意が必要です。

住宅ローン控除を受けるために必要な知識や注意点、まあ控除を受けるときに必要な耐震基準適合証明書について解説します。

住宅ローン控除とは?

住宅を購入する流れの中で、住宅ローン控除という言葉を耳にする機会があるでしょう。ローン控除とはどういったものでしょうか。

住宅ローン控除とは?

住宅ローン控除の概要

住宅を買うときに住宅ローンを利用した人は、その融資(借入金)の年末残高に応じて所得税の控除を受けられますが、これを住宅借入金等特別控除と言います。不動産業界では、住宅ローン控除や住宅ローン減税と呼ぶことも多いです。ちなみに、所得税から控除しきれない分は翌年の住民税から控除されます。

新築もしくは中古住宅のいずれを購入した人も対象となっており、毎年の年末残高から計算した金額が控除されるものです。よく改正される制度ですが、現時点(2016年11月4日時点)では、融資の年末残高の1%が控除額となります(以下、参照)。

<一般住宅の場合の控除額>
一般住宅の場合の控除額

<認定住宅(長期優良住宅、低炭素住宅)の控除額>
認定住宅(長期優良住宅、低炭素住宅)の控除額

何もしなければローン控除の対象とならない中古住宅がある

住宅ローン控除の対象は、新築もしくは中古住宅のいずれもと書きましたが、築年数によっては対象とならない中古住宅があります。その築年数の要件が以下の内容です。

  • 耐火建築物以外の場合 :20年以内に建築された住宅であること
  • 耐火建築物の場合 : 25年以内に建築された住宅であること

この築年数に満たない場合は、何もしなければ住宅ローン控除を受けられないため、注意が必要です。

購入しようとしている住宅が、耐火建築物であるかどうかを確認するにはどうすればよいでしょうか。それは、国税庁のHPの記載内容が参考になります。

国税庁HPより引用:
「耐火建築物」とは、建物登記簿に記載された家屋の構造のうち、建物の主たる部分の構成材料が、石造、れんが造、コンクリートブロック造、鉄骨造(軽量鉄骨造は含みません。)、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造のものをいいます。

つまり、以下のようになります。

○耐火建築物
石造、れんが造、コンクリートブロック造、鉄骨造(軽量鉄骨造は含みません。)、鉄筋コンクリート造、は鉄骨鉄筋コンクリート造

○耐火建築物以外
木造、軽量鉄骨造

そして、この構造の確認は建物の登記簿の家屋の構造欄を確認するということです。不動産会社から建物の登記事項証明書を見せてもらって確認するとよいでしょう。

築年数が満たない場合の対応策としては、以下の3つの方法があります。

1. 耐震基準適合証明書を取得する

耐震基準に適合していることを証明するため、建築士等に耐震診断を実施してもらいます。耐震診断の結果、耐震基準に適合していることが確認され、それを証明する書類(耐震基準適合証明書)を発行されればローン控除を受けられる物件となります。

2.既存住宅売買瑕疵保険の保険付保証明書を取得する

既存住宅売買瑕疵保険という保険に加入すると保険付保証明書が発行されますが、これを入手することでもローン控除を受けられるようになります。保険に加入するためには現場検査を受けて合格しなければなりません。

3.既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)を取得する

既存住宅性能評価制度を利用して、この検査で耐震等級1以上となれば控除の対象となります。

住宅ローン控除に必要は耐震基準適合証明書とは?

築年数の要件を満たしていない中古住宅を購入する人は、前述の3つの方法のいずれかをとらないといけないわけですが、このコラムでは1つ目の耐震基準適合証明書について詳しく解説します。

耐震基準適合証明書を取得するには、前述のように建築士等による耐震診断を行う必要があります。これにより、耐震基準に適合していることを証明するのですが、残念ながら不適合となる物件も非常に多いです。耐震診断を行うには、耐力壁の位置の確認が重要なポイントとなりますが、図面や現地でこれを満足に確認できないケースがあり、その場合は不適合と判断されることが多いです。

必要な耐震基準適合証明書ですが、入手は簡単ではないということです。

ちなみに、耐震基準適合証明書は住宅ローン控除にのみ使用するものではありません。他にも、登録免許税、不動産取得税、固定資産税の軽減にも使用できることを知っておきましょう。

耐震基準適合証明書の取得と注意点

耐震基準適合証明書が、築年数の要件を満たしていない中古住宅の購入で住宅ローン控除を受けるためにとれる対応の1つであることはわかりましたが、具体的にどのような流れでこの証明書を所得すればよいのか知りたいですね。

耐震基準適合証明書の取得と注意点

耐震基準適合証明書の取得の流れ

中古住宅の購入の流れの中で、耐震基準適合証明書を取得するわけですが、以下がその具体的な流れです。

  1. 購入する物件について購入申込する
  2. 耐震診断および耐震基準適合証明書の発行を行う建築士等に耐震診断を申し込む
  3. 耐震診断を実行する
  4. 耐震診断の結果、基準に適合すると判定される
  5. 売買契約を締結する
  6. 耐震基準適合証明書を発行してもらう
  7. 住宅ローンの金銭消費貸借契約を締結する
  8. 住宅ローンの融資実行と引渡し

以上が一般的に考えられる流れですが、上の「1.購入する物件について購入申込する」と「5.売買契約を締結する」まで先に済ませておいてから、「2.耐震診断および耐震基準適合証明書の発行を行う建築士等に耐震診断を申し込む」以降へと進んでいっても問題はありません。

耐震基準に不適合と判定されたとき

耐震診断を実施した結果、残念ながら耐震基準に不適合と判定されてしまうこともよくあることです。この場合、耐震改修工事を行った後に再調査を行って、基準に適合すれば耐震基準適合証明書を発行してもらうことも可能です。

但し、必要な耐震改修工事の規模や内容によっては、あまり現実的ではないことも少なくありません。改修費用があまりに大きい場合には、住宅ローン控除で受けられる減税のメリットを超える費用負担が生じることもあります。

現実的に耐震改修をして再調査をするだけの意味があるのか、実現性がどの程度あるのかといったことについて耐震診断をした会社に相談するなどして慎重に検討しましょう。

耐震基準適合証明書の取得の注意点

耐震基準適合証明書を取得するときに注意しておきたいことがいくつかありますので、ご紹介します。

耐震基準適合証明書の発行は引渡しの前まで

耐震基準適合証明書の発行は原則として、購入した中古住宅の引渡しを受ける前までにしておく必要があります。

但し、引渡し前に耐震診断で不適合となった場合には、引渡し後の耐震改修工事や再調査を経てから、この証明書を発行してもらっても大丈夫です。この場合でも、引渡し前に耐震診断をしていることが条件ですから、注意してください。

点検口の有無は事前に確認

耐震診断は、診断者によって多少、解釈の異なるところはあります。ただ、一般的には床下や屋根裏を点検口などが確認できない場合、耐震性に関する重要な部分を調査できないことから、耐震診断が実行不可、もしくは実行しても不適合となる可能性が高いです。

耐震診断は当然ながら費用のかかることですから、依頼する前に床下や屋根裏に点検口があるかどうか確認しておくことをお勧めします。

耐力壁の位置がわかる図面の有無は事前に確認

床下や屋根裏の点検口の事前確認と同じく大事な注意点が、図面の有無の確認です。図面と言っても間取り図があればよいというものではなく、耐力壁の位置を確認できる図面が必要です。木造軸組工法であれば柱や梁の位置が明記されている図面です。

売主に持っている図面を確認し、その図面で対応可能なものか判断できない場合には、事前に耐震診断会社へ送付してもてもらうのも1つの方法です。

耐震基準に不適合でも他の方法(保険)を検討する

耐震診断で不適合となる中古住宅は多いです。本当に耐震性が低いために不適合となることもあれば、図面不足などで確認が十分にできないために不適合と判定されることもあります。そして、耐震改修工事をして再調査で適合させるという流れでも対応が困難なことは非常に多いです。

そういった場合、住宅ローン控除をすぐにあきらめないことです。他の方法として、「既存住宅売買瑕疵保険の保険付保証明書を取得する」「既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)を取得する」という2つの方法があることは前述の通りです。

このうち、「既存住宅売買瑕疵保険の保険付保証明書を取得する」という方法が有効な物件もあります。耐震診断とは異なる評価方法ですから、耐震診断がダメでも試す価値はあります。もちろん、この方法にも現場検査があり不可となることもありますから、取り扱う会社によく相談してから判断するとよいでしょう。

最近は、購入判断の参考とするために住宅診断(ホームインスペクション)を利用する人が多くなりましたが、住宅診断と一緒に耐震診断や既存住宅売買瑕疵保険の検査を利用するとコスト的にも効率的ですから、検討する価値は十分にあります。

 

○関連記事・コラム

○専門家に依頼するなら