建売住宅とは

日本でマイホームを購入するときは、建売住宅を購入することが非常に多いです。建売住宅は日本の住宅産業の中心だと言ってよいでしょう。

住宅を購入される方のなかには、建売住宅、注文住宅、建築条件付き土地といった用語を混同してしまう方が少なくありません。これに限らず、はじめての住宅購入ですから、わからない用語が多いのは当然のことでしょう。

そこで、建て売り住宅とは何か?という点に絞って基礎的な知識とそれを購入するメリットやデメリットを解説しますので、ここで建売のことをしっかりと理解しておきましょう。できれば、理解した上で物件探しを始める方が、建売の購入で失敗したり、後悔したりする確率も下がることでしょう。

建売住宅とは?

まずは、建売住宅という言葉の意味から理解していきましょう。

建売住宅とは、基本的には建物とその敷地をセットで販売している新築一戸建て住宅です。ただし、数は少ないですが、敷地となる土地は買主に所有権移転せず、一定期間の借地とすることもあります。つまり、土地は借りて、建物は買主の所有となるもので、定期借地権付き建売住宅(または分譲住宅)といいます。

定期借地権付きの物件は少ないですから、基本的には建物と敷地がセットになったものが建売だと考えておいて、概ね問題はありません。

建売住宅の事業主がやること

建売住宅は、その事業を行う者(=事業主)が、以下の業務を行います。

  • 土地の仕入れ
  • 土地の開発・造成
  • 建物等の設計・企画
  • 建物等の施工
  • 販売

事業主が行うことは、主なものだけで以上の5点ですが、これら全てを事業主が自ら手掛けるとは限りません。一部を他社に委託することはよくありますし、一部どころか多くの部分を委託することもあります。

たとえば、土地の仕入れは不動産会社に土地の売主を仲介してもらい、土地の開発・造成は土木事業者に、建物の設計は設計事務所に、施工や現場管理は建築会社に、販売は不動産会社に委託することで、自社ではほとんど何もしないこともあります。

もちろん、条件・スケジュールなど、様々な事項について打合せや協議を重ねることになるため、本当に何もしないわけではありません。

パワービルダーは自社でするが、多くの下請け業者を使う

昔の建売住宅業界では、小規模の不動産会社が大量に参入していた関係で、前述したように多くの部分を他社に委託していることが多かったのですが、最近は建売住宅事業を行う事業者の規模が大きくなり、自社で行う部分も増えました。

ちなみに、割と低価格の建売住宅を広域で大量に供給している建売住宅の事業者のことをパワービルダーといいます。

このパワービルダーは、自社内に設計や施工部門を持っていて、自社内で処理することができるのです。ただし、パワービルダーが、設計や施工の全てを自社内で賄っているわけではありません。外部に多くの協力業者をもっていて、そこへ委託している業務も非常に多いです。

施工については、多くの下請け業者を使っていて、工程管理などを含めた現場管理は自社の従業員(現場監督など)がやっているというケースが多いです。

建売事業は知識と資金と僅かな人でできるビジネス

建売住宅の販売ビジネスは、多くの部分を外注できることが分かったと思います。そうなると、ある程度の建売住宅の企画・販売などの知識と経験、土地購入と建築工事代金の資金の準備、数人の人がいれば、このビジネスを行うことができるのです。

1,2棟だけの建売住宅をする程度なら、実質、1人でもできなくはないくらいです。パワービルダーは、年間に何百棟、何千棟も手掛けていますが、実際に年間に5棟未満のビジネスをしている会社もあります。

完成する前から販売する建売住宅が多い

建売住宅は、その言葉の構成から「建てたものを売る」と見ることができそうですが、実際に以前は完成した物件を販売することが多かったです。完成状態を購入検討者に見てもらってから、買ってもらうという流れです。

しかし、最近の販売形態はそれとは異なり、建築途中に販売していることや、まだ着工していない状態で販売していることもあります。売買契約が成立してから売るという形ですが、「売ってから建てる」とうことから、不動産業界内では、「建売ではなくて、売り建て住宅ですね」という人もいます。

建物が完成する前から販売することは、今では当たり前になっていると理解しておきましょう。

建築条件付き土地の取引と近いこともある

建売住宅とは異なる販売形態で、建築条件付き土地の売買とその土地に建てる建物の建築工事請負という形もあります。買主か見れば、どの建築業者に工事を発注するか指定された土地を買うというもので、土地の売買契約を結んで後、建物の工事請負契約も結ぶことになります。

この取引では、建物のプランなどを自由に選択できることが基本的な取引なのですが、実際には間取りや仕様についての自由度がほとんどなく、建売住宅を買うのとあまり変わらないケースもあります。

建売住宅を購入するメリット

建売住宅を購入するメリット

建売住宅を購入するメリット

建売住宅の基礎的な知識を学んだ後は、購入するメリットについて紹介します。深く考えなくてもイメージできていたメリットもあれば、ここで始めて知るメリットやメリットだと誤解していたものもあると思いますが、ご覧ください。

価格が安いものもある

建売住宅だから当然に安いと考えている人はいませんか?

確かに、同じ立地・規模(面積)の注文住宅に比べると、安いと言える物件は多いです。しかし、必ずしもそうとは言えない、つまり安くない物件もあります。誰もが知っているような大手ハウスメーカーが分譲するような物件では、特にその傾向があります。

ただし、比較的安い物件が多いのは事実ですので、全てが安いわけではなく、似た条件の注文住宅の家に比べると安いものが多いと考えておきましょう。

同じ地域、規模で価格差が大きい建売住宅が販売されている場合、敷地条件か建物の仕様レベルに大きな差があることが多いので、そういう意識をもって物件情報を見るようにしましょう。

購入価格の総額を把握しやすい

建売住宅を購入するメリットとしては、実は、土地・建物も含めて購入価格の総額を把握しやすいことが大きいです。逆にいえば、注文住宅では、土地を購入する時点で建物価格がはっきりしないですし、建物のプランを打合せしている段階でも建物価格がいくらになるか、はっきりした金額がわかりません。

予算との関係で、プランを何度も見直しながら話を進めていくということも珍しくありません。

住宅ローン(融資)がシンプル

建売住宅では、購入価格の総額がわかっているため、住宅ローンの審査・借入申し込みなどの手続きがシンプルです。注文住宅なら、土地の購入や建物の中間金のための先行融資(つなぎ融資)が必要な場合も多く、融資の申し込み・審査などが煩雑になります。

土地と建物の購入代金について同時に融資を受けられることは、シンプルなので、取り扱い金融機関も多く、買主にとっては住宅ローンの選択肢が広がるというメリットもあります。

建物のプラン・仕様を考える手間を省ける

建売住宅の多くは、間取りなどのプランや、壁紙・床材などの内装材、外壁材、住宅設備などが、建売事業者によって決められているため、いろいろなことを調べながら、決めていく手間がかかりません。注文住宅であれば、大量の選択肢のなかから1つずつ選んでいく必要があるので、この点は大きな違いになっています。

内装・外装のデザインを考慮した物件も増えてきた

建売住宅の多くは、どの住宅でも似たようなデザイン、間取り、設備、内装、外装になっており、あまりデザイン性を考慮していないと言われています。しかし、これが徐々に変化しつつあり、一部ではデザイン性を考慮した建売物件も出てきています。

まだまだ、そういった選択肢は少ないですが、デザイン面、住宅の個性というものに興味があるなら、物件探しをするなかでよく比較してみましょう。

完成物件を確認できる

建売住宅を買うときのメリットであり、特徴とも言えるのは、建物の完成状態、つまり実物を見てから購入するかどうか判断できるという点です。図面などの資料を見るだけではわかりづらい広さ、内装・外装の見た目のイメージを確認してから判断できるのは大きなメリットです。

ただし、建売住宅でも完成する前から販売することが増えたため、そういった物件ではこのメリットはないことになります。

早く入居できる

建物が完成している物件を購入する場合、現地内見や売買契約をしてから入居までを早くすることができます。売買契約から入居までの最短スケジュールは、住宅ローンを利用する人で1カ月程度、住宅ローンを利用しない人なら2週間程度で可能なことがあります。

何も無理に急いで入居する必要はないですから、どうしても急ぐ事情がある人にとってのメリットということになります。

買い替えしやすい

新居を購入するときとタイミングを合わせて、それまでのマイホームを売却する、つまり自宅を買い替えするという人も少なくありません。その場合、資金の都合次第では、自宅を売却した資金を購入資金の一部か全部に充てる計画である人も多く、そうなると自宅が売れるまで新居を買うことができません。

しかし、自宅を売る上で、それを買う人にとっては、いつ引渡してもらえるかという問題が生じます。

たとえば、Aさんが、自宅を売却してから、別の土地に新居を建設する予定です。Aさんの自宅を買いたいと思ったBさんは、Aさんの新居が完成して引越しするまで、Aさんの自宅の引き渡しを受けることができないことがあります。Aさんの新居の完成まで半年かかるとすれば、それだけBさんは待つことになるので、その条件なら買いたくないと考える人もいるわけです。

もし、Aさんの新居が完成済みの建売住宅ならば、Aさんの引っ越しが早いですから、Bさんの待つ期間も短くなるので、Bさんも買いやすいですね。つまり、Aさんにすれば売りやすいということになります。

買い替えはいろいろな条件が影響するので、一概には言えませんが、建売住宅を買うときの方が買い替えは進めやすいことが多いです。

建売住宅を購入するデメリット

建売住宅を購入するデメリット

建売住宅を購入するデメリット

最後に、建売住宅を購入するデメリットを紹介します。適切な購入判断をするためには、メリットもデメリットも両方を知っておく必要があるのは言うまでもありませんね。

建物のプラン・仕様を選べない

建売住宅の最大のマイナス面の特徴と言ってもよいことが、プランや仕様を買主が選ぶことができないという点です。

間取りの全てではなくても、主寝室をもう少し広くしたいとか、部屋を小さくして収納を広げたいとか、子供部屋のクロス(壁紙)の色を変更したいなどのように、一部の変更をしたいことはあるものです。しかし、そういった変更が難しいのが建売でもあります。

デザイン性に特徴が少ない

建売住宅には、大きな土地を分割して、そこに何棟もの建物を建築して販売するもの、所謂、分譲住宅も多いですが、そういったところでは、同じデザインで見た目もほとんど同じ住宅が並んでいることになります。統一感がある一方で、面白みのない住宅地になるとの意見も多いです。

デザインの面で特徴がない住宅が多いことは、建売のデメリットとされています。

購入後の価格低下は避けられない

建売住宅は、購入した後すぐに建物の価値が大きく下がります。実は、このことは注文住宅であっても同じで、新築一戸建て全般に言えるデメリットです。分譲マンションの場合、市場環境・経済動向・地域の人気度などによって、価格が上昇する物件もありますが、一戸建ての場合は基本的には下がります。

建物価格は下がるものの、土地価格の動きはそれほど大きくないですし、市場環境などによっては土地価格が上がることもあります。ただし、土地と建物の総額でみると、基本的には下がると理解しておく方が無難です。

完成物件なら建築途中をチェックできない

完成済みの建売住宅を購入する場合、建築途中に現場で施工の様子をチェックすることはできません。着工前の住宅を契約したなら、施工の様子をチェックすることで、欠陥工事を抑制することも可能ですが、そのチャンスがないということになります。

最近は、建築途中に第三者のホームインスペクションを依頼して、プロに施工不具合がないかチェックしてもらうサービスを利用する人が増えましたが、それができないということです。ただし、建物の完成状態でも可能な範囲でインスペクションを依頼することはできます。

施工不良が多く見つかる

建築途中に施工状況をチェックしたときや、入居した後に、建物の施工不良がたくさん見つかることがあります。これは、全ての建売住宅に該当するわけではないですが、多くの住宅にその可能性があることです。

建築途中の施工監理や現場管理が適切に実行されず、結果的に施工不良が生じている建売住宅は少なくないので、リスクがあることを理解し、できる範囲でホームインスペクションなどのリスク抑制策をとりましょう。

建売住宅に関して、購入する前に、できれば物件探しをする前に知っておきたい基礎知識とメリット・デメリットについて解説しました。これをきっかけに、住宅購入に関して学びながら、良いマイホーム探しをしてください。

ホームインスペクションのアネスト

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第三者の一級建築士が、住宅購入・新築時などに建物の施工ミスや劣化具合などを調査する。新築(建築途中および完成物件)・中古住宅に対応。安心してマイホームを購入できる。