マンションの遮音性能

新築マンションを購入する人がよく気にしていることの1つが、遮音性能です。マンションでは、隣や上階の音に対してストレスを感じたり、管理組合のなかでトラブルが持ち上がったりすることがよくあります。

こういった音の問題は、建物の遮音性と関わることですので、関連知識を理解しておきましょう。

騒音問題

マンション選びのときの大事なチェックポイントの1つが遮音性能です。

マンションは共同住宅ですので、一戸建て住宅とは根本的に異なるものです。1つの建物のなかに、多数の世帯が共同して居住していることを理解しておかないといけません。

もちろん、1つ1つの住戸は構造躯体となる壁などで隔離されているのですが、同じ建物を共同して使用しているイメージであることを頭に入れておいた方が良いでしょう。

つまり、1つの建物に共同して居住しているわけですので、他の住戸と互いに影響しあう部分が多少はあるものです。日々の正確のなかで感じることで、且つ、よくトラブルになっていることがマンションの騒音に関することです。

  • 「上階からの音がうるさい」
  • 「真夜中なのに掃除機をかける音がする」
  • 「子供の走り回る音がうるさい」

などといった騒音問題に関する苦情は後を絶ちません。

そして、これらは被害を受けるだけではなく、逆に加害する側となりクレームを受ける側になることもあるわけですね。それほど迷惑をかける行為をしていないつもりなのに、下階から管理人や管理会社を介してクレームを受けることもあるのです。

この音の問題を難しくしているのは、その感じ方に個人差があるからです。同じ音でも人によって感じ方が異なるため、クレームを受けた側がそれを理解できず、クレームを受けること自体へ強い不満を持つこともあります。そうして、同じマンション内の居住者同士の関係が悪化してしまうことも、、、

一度気になりだすと、比較的小さな音であっても気になって眠ることもできない、、、というお話を伺うこともあります。共同住宅であるマンションである以上は、騒音問題への対策に完璧を望むのは難しい面もありますが、せめて購入する前に、そのリスクについては調査しておきたいものです。

床の工法(直貼りと2重床)

マンションで問題となる音には、建物内部(上下、隣との間)の音、室内(同じ住戸内の音)、建物外部からの音と3つにわけることができます。

このうち、最もよく問題となっているのは、「建物内部(上下、隣との間)の音」です。上階からの物音がうるさい、という場合には、床(下階から見た天井)のコンクリートや床の工法が関係しています。床のコンクリートや工法によって、遮音性能が異なりますので、これを理解しておいて、マンション購入前にチェックしておくと良いでしょう。

マンションの床には、いくつかの工法があります。

1.コンクリートスラブの上に、フローリングを直貼りする(直貼り工法

フローリングにはクッション材がついており、遮音性を補っている。

2.コンクリートスラブとフローリングの間に支持脚で空間を設ける(2重床工法

上記が直貼りと2重床で、マンションではどちらの工法もよく採用されていますが、それぞれに特徴があります。

コンクリートは、子供が椅子から飛び降りたときに生じるような「ドスン」という重い音を抑えることができます。この重い音を重量衝撃音(LL)と呼びます。コンクリートが厚い(重い)ほど抑えられると言われており、小さな子供がいる場合には、コンクリートの厚みが大事になります。

また、2重床は、スプーンを落とした時に生じる「カツーン」と響くような軽い音に有効だと言われています。この軽い音を軽量衝撃音(LH)と呼びます。一概には言えませんが、掃除機をかけるときの音はこちらですね。

ちなみに、この軽い音(軽量衝撃音)は2重床にしなくとも床の仕上げ(表面)をカーペットにすれば、良い対策となります。しかし、現在の床の流行はフローリングですので、新築マンションでカーペットを採用することはほとんどありません。中古マンションを見学に行きますとカーペット仕上げの床を見かけることもありますが。

中古マンションによっては、遮音性の問題を考慮して、「床をフローリングにしていはいけない」「フローリングにするならば、等級をL-45以上とする」といった制限があることも多いです。これは、遮音性能が劣るからです。

参考として、日本建築学会の遮音性能基準をあげておきます。

遮音等級L-40L-45L-50L-55
走り回る音
飛び跳ねる音
かすかに聞こえるが遠くから聞こえる感じ聞こえるが、意識することはあまりない小さく聞こえる聞こえる
椅子の移動音
物の落下音
ほとんど聞こえない小さく聞こえる聞こえる気になる
生活実感かすかな物音
気配はするが気にならない
多少の生活感がある
スプーンの落下音が多少聞こえる
生活感が意識される
歩行がわかる
生活感がよくわかる
椅子をひきずる音がうるさく感じる

上記の表内の数値が低いほど、遮音性能が高いとされています。新築マンションであれば、パンフレットにこの遮音性能が記載されていることも多いですが、L-45が目安です。

建築コスト・販売価格

当然ながら、2重床であってもコンクリートスラブがあるわけですので、音の対策としては2重床の方が良いと考えがちなのですが、単純にそうもいきません。その理由は、建築コストや規制の問題などとも関係して、建物のプランによるからです。。。と話を広げてしまいますと一般の方には理解しづらくなってしまいますね。

コンクリートの厚みが厚く、さらに2重床にしますと、その分、床全体の高さが高くなりますね。マンションの高さを考えるときには、この床の高さのほか室内空間の高さ(天井高)もありますが、これらの高さを高くすればするほど、マンションの階数を多くとれないことがあります。

高さへの制限などが関係してくるからです。階数が減ると総戸数も減ります。総戸数が減ると販売して得る売り上げも減る、、、

床の高さを高くする

 ↓

マンション全体の高さ制限にかかる

 ↓

階数を減らす

 ↓

総戸数が減る

 ↓

販売する住戸数が減る

 ↓

売主の売上が減る or 販売価格を高くする

上記のようにマンションの販売計画や購入価格とも関連してくるのです。とにかく、規制等の関係で何も考えずに天井高や床の高さをあげていくわけにはいかないのです。

もちろん、厚いコンクリートで2重床にすれば、そのコスト自体も高くなるので販売価格に影響してきますね。十分なコンクリートの厚さと2重床にすることで、かなりコスト増・販売価格増となるようであれば、売主はその仕様は採用しないことが多いです。

売れないほど高くなってしまうようでは、売主としても困るので、市場調査を行うなどして、そのマンションの仕様を決めるのです。

コンクリートスラブの厚さをほどほどにして2重床にしたり、厚さをしっかりとったけど直貼りにしたり、、、コンクリートスラブの厚さもボイド(コンクリート内部の穴)とも関係してくるのですが、これはまた別の機会にお話しします。

とにかく、そういった事情もあって、なかなか完璧はありません。こういった背景があることもマンション選びの参考にしてみてください。

ホームインスペクションのアネスト

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