中古住宅の購入時に地盤が心配なときの対処法と注意点

家を買うときに地盤を心配する方は多いでしょう。地盤が軟弱で建物が傾いたり、壁や基礎などに大きなひび割れが生じたりすることで、建物の寿命に悪影響をあたえてしまうのではないかと心配するのは当然のことです。

もちろん、こういった地盤に関する心配をするのは、新築住宅だけに限らず、中古住宅を購入するときも同じです。

新築と中古住宅の地盤調査の有無の違い

新築住宅と中古住宅とでは、地盤調査の有無について明確な違いがあります。

新築住宅

新築住宅では、その建物を建築する前に地盤調査を行います。

今の時代、新築する前に地盤調査を行っていない物件というのはほぼないでしょう。ですから、その地盤調査の結果(地盤調査報告書)を書面で提示してもらい、その内容を確認することで購入希望物件の地盤がどういった状況であるか理解することは可能です(但し、地盤調査報告書を読み解くのは難しいため説明を受ける必要があります)。

中古住宅

しかし、中古住宅を購入するとき、その売買の直前に改めて地盤調査をすることはありません。それだけに、地盤が弱くないだろうかと心配しても解決できずに(心配を解消できずに)、そのまま購入している方も多いです。

スウェーデン式サウンディング試験

住宅における地盤調査の主流となっている調査方法は、スウェーデン式サウンディング試験と呼ばれるもので、多大なコストをかけずに地盤を調査・確認できるため、最も普及している調査方法です。本来の地盤調査の簡易的な方法と認識されているものですが、一戸建て住宅の建築前の調査としては一般的なものです。

この調査では、調査機器の真下方向の地盤の強度等を確認するのですが、建物があれば、それをどけて調査するわけにもいかないために建物直下の地盤を調査することができません。庭が広ければ、建物の無い箇所で調査して参考にすることはできますが、地盤調査は建物の真下の状況を確認するためのものですから、あまり意味がないと言えます(何の参考データも無いよりよいですが)。

同じ敷地内でも、その位置によって地盤の強度が異なることが多いため、建物の真下(通常は四隅と中央付近)で調査するものです。たとえば、敷地内の道路付近の地盤が良くても敷地の奥の方が弱いということはよくあることです。

ちなみに、スウェーデン式サウンディング試験以外の地盤調査もあるのですが、対応する会社は少なく、多くの実績があるわけではないこともあり、懐疑的な意見も少なくありません(どの方法でもメリット・デメリットはあります)。

どの方法であっても、敷地内に十分なスペースが無いと実施しづらいという問題もあります。

中古住宅を購入するときの地盤対策

中古住宅の地盤のチェックポイント

ただ、中古住宅の購入時に地盤を確認することが難しいのかと言えば、そういうわけではありません。その方法をご紹介します。主なチェックポイントは以下の4点です。

中古住宅購入時の地盤のチェックポイント

  • 新築時の地盤調査報告書を確認する
  • 役所で近隣の地盤調査データを閲覧する
  • 建物そのものに出ている症状をチェックする
  • 近隣建物・外構に出ている症状をチェックする

上記の4点のチェックポイントの詳細は以下の通りです。

新築時の地盤調査報告書を確認する

その中古物件の築年数や売主にもよりますが、新築時点で地盤調査した際の資料が現存しているならば、その資料(地盤調査報告書)を閲覧して、確認することができます。

古い住宅の場合、地盤調査をせずに建築していることもありますし、地盤調査をしていたとしても資料が何も残っていないということもあるため、入手できないことが多いです。ダメ元で売主に地盤調査報告書が無いか聞いてみましょう。

地盤は時間の経過で自然と変化するものではないため、新築時の地盤調査報告書の確認ができれば非常によいことです。

役所で近隣の地盤調査データを閲覧する

役所には、過去の地盤調査データがあり、それを閲覧できる場合があります。但し、購入検討している住宅の敷地のデータがあるということは稀ですから、基本的には近隣のデータを参考として見る程度です。地盤は同じ敷地内でも調査ポイントによって異なることもあるため、近隣の地盤調査データはちょっとした参考程度だと考えてください。

建物そのものに出ている症状をチェックする

意外と有効な方法は、その敷地上に建っている建物の状況を診断する方法です。

住宅診断で建物の症状をチェック

地盤が弱く、さらに建物を建築する際に適切な地盤改良工事や地盤補強工事を怠っている場合には、新築してから数年のうちに建物に影響が出てくることが多いです。傾きや基礎・壁などのひび割れがその代表的な症状です。

つまり、中古住宅の購入時に住宅診断(ホームインスペクション)を利用して、傾きやひび割れ等の症状の有無を確認することで、地盤や地盤改良などに関して1つの有効な判断材料となりえます。たとえば、築10年の中古住宅で軟弱地盤に起因するような症状が何も出ていなければ、今後、新たに軟弱地盤を原因とした建物の傾きが起こる可能性は極めて低いと言えます。

但し、購入した後に建物を建て替えるのであれば、注意が必要です。現存する建物に傾きなどの症状がなくとも、それはその建物の重さ、各所への荷重のかかり方などが、地盤状況(改良工事等がある場合はそれも含めて)に合っているからであって、建替えによって建物の形状や重さが変わっても大丈夫だと言えるわけではありません。

もちろん、建て替えるときには改めて地盤調査をするわけですから、その調査結果に合わせた地盤改良工事や補強工事をすることで対応できます(コストはかかりますが)。

建物の状況を把握するための住宅診断(ホームインスペクション)ですが、実は地盤に関することも間接的に参考とすることはできるのです。

近隣建物・外構に出ている症状をチェックする

ひび割れは軟弱地盤?

前述の「建物そのものに出ている症状をチェックする」と同じ意味で、隣地や周辺の建物の状況を観察することで、地盤を判断するための参考情報を得られることもあります。他人の家をあまりじろじろ見ていられるものではありませんが、敷地と道路の境界などにあるブロック塀などの外構部分の症状の有無もよい参考となることがあります。

たとえば、ブロック塀の傾きや亀裂は近隣の軟弱地盤が原因となっている可能性があります。注意したいのは、こういった症状があれば全て軟弱地盤だと決めつけてはいけないということです。前述した「建物そのものに出ている症状をチェックする」のところで述べた建物の傾きやひび割れもそうですが、これらはあくまで症状でしかないため、原因が何かを考えなくてはいけません。

原因の1つの候補として、軟弱地盤がありうるというだけのことですから、この点は誤解しないようにしましょう。

ホームインスペクションのアネスト

ホームインスペクション
第三者の一級建築士が、住宅購入・新築時などに建物の施工ミスや劣化具合などを調査する。新築(建築途中および完成物件)・中古住宅に対応。安心してマイホームを購入できる。