中古住宅の購入を考えている方がインターネットの物件情報サイトやチラシなどで物件情報を見ていると、稀に「再建築不可」と記された物件を見つけることがあります。そう記された物件の売り出し価格を見ると他の物件よりも明らかに安いことに気づかれるでしょう。

安いからには当然ながらそれだけの理由があるわけですが、再建築不可の物件の購入を検討するならば、しっかりその内容、メリット・デメリットや注意点を理解して判断しなければなりません。

あまり一般の方は再建築不可物件に手を出すことはないですが、考え方次第では購入検討もアリかもしれません。

再建築不可の物件とは?

まず再建築不可の物件がどういうものであるか説明します。

漢字の通りですが、再建築不可の物件とは建替えすることができない物件です。今現在建っている建物を取り壊して新しい住宅を建てようとしても、それが認められません。

再建築できない理由は、「建築基準法上の道路に2m以上、接していないから」です。この条件を満たさない土地では建物を建築することができないのです(一部例外あり)。

2mという長さは、畳の長い辺よりもやや長いぐらいです。そのような土地は非常に少ないですが、都市部では普通の住宅地に意外と存在しているものです。下図は住宅地を上から見たところです。

再建築不可の例

上記の図でグレーの部分がよく見られる再建築できない物件の土地の形状です。

道路に2m未満しか接していない土地となり、建替えできないのです。ほかにも、一見すると道路に2m以上接しているにも関わらず再建築不可の物件もあります。それは建築基準上で認められた道路ではない、単なる通路に接しているだけであるから再建築不可とされているケースです。

ちなみに再建築不可であることは、非常に重要なことであるため、不動産会社は買主に対してその事実を説明する義務を負います。ですから、必ず説明されるはずですから、知らずに買ってしまうということはまずないでしょう。

再建築不可の中古物件のデメリット・問題点

次に再建築不可の中古物件を買う場合のデメリットについて説明します。

最大のデメリットは建替えできないこと

もちろん、建替えできないこと自体が最大のデメリットだと言えます。建て替えしないつもりで購入したものの、大きな地震で倒壊してしまったとしましょう。そのようなときでも、建替えできないために使用できない物件になってしまいます。

資産価値が低い

他のデメリットとしては、資産価値が低いということが言えます。

事業をしている方が、将来、この土地を担保にして銀行から事業資金の融資を受けるなどといった使い方には向きません。担保としての評価は非常に低く、そもそも融資対象としない銀行が多いです。

住宅ローンが通らない(融資を受けられない)問題

融資という点では、この再建築不可の物件を購入するときの購入資金を住宅ローンで賄おうとしても、住宅ローンが通らない(融資を受けられない)という問題があります。そのため、購入するには現金が必要となります。

なかには、こういった物件に対して融資する銀行もあるようですが、買主の条件(年収・頭金など)を厳しくみたり、金利が高かったりと壁があります。

住宅ローンを通らないということは購入するときだけの問題ではありません。

将来、その物件を売却しようとしても、そのときの買主が住宅ローンを利用できないわけですから、なかなか売れません。時間をかけて買主を探すか、破格の安さで不動産業者に売却するか、厳しい選択を迫られます。不動産業者のなかにはこういった再建築不可の物件を精力的に購入・流通させようとする会社もあります。

その他のデメリット

再建築不可物件のデメリットは他にもあります。土地の形状がかわっていることが多いため、住宅を建てて使用する有効なスペースが土地面積よりもかなり狭くなってしまうことが多いです。通路部分の面積が無駄になりがちだということです。

そして、リフォームする際には、思い建築資材などをその通路の奥まで運ばなければならないため、リフォームコストが割高になることがあります。

また、この通路部分を駐車場に使用しようとしても、通路の両脇の塀などと車との隙間が狭くて乗り降りしづらいという問題も生じます。

何よりも、道路と敷地の位置関係によっては、火事のときに消防車が建物のそばまで入ってこれずに、ホースを長く伸ばして消火せねばならず、消火作業が不利になることもあります(周囲との関係によります)。そうやって延長して使えなくなった建物を建て替えもできません。

再建築不可物件を購入する場合のデメリットをまとめると以下のようになります。

  • 建替えできない(地震等で倒壊しても建替えできない)
  • 資産価値が低い
  • 住宅ローンが通らないので現金が必要
  • 一部の住宅ローンが使用できるが金利条件が悪い
  • 売却時に現金購入の人は少ないので不動産業者に安く下取りされるかも
  • 通路部分の面積が無駄になる
  • リフォームの工事費がやや高くなることがある
  • 駐車が難しいまたは乗り降り不可(つまり駐車できない)の場合がある
  • 道路との関係によっては消防車が近くに入れず消化が遅れる可能性がある

メリットやリスクといった問題がこれだけあるので、慎重に考えたいところです。しかし、再建築不可の物件を絶対に購入すべきではないかというと、メリットの部分もよく考えて判断してもよいかもしれません。なかには購入を検討するだけの価値がある物件も無いとはいえません。

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