中古物件購入時の敷地のチェックポイント

中古住宅を購入しようと対象物件の内見に行ったときには、建物へ意識がいきがちです。間取りや部屋の広さ、建物の劣化具合などを見て購入判断するのは当然のことなのですが、その建物の敷地についてもしっかりチェックしておきたいものです。

不動産の資産価値という意味では、建物だけではなく土地のこともよく考えなければいけないのです。

敷地を見るときに必ずチェックしておきたいポイントは以下のものです。

  • 土地の形状・道路との段差・傾斜
  • 敷地の排水状況・水はけ
  • 境界の明確性
  • 越境物の有無
  • 擁壁の水抜き穴の有無
  • 日照

1つずつ見ていきましょう。

形状・段差・水はけ

まずは「土地の形状・傾斜」です。土地の形状が整形であるか不整形であるかは、土地の活用のし辛さと大きく関わってくるために重要なチェックポイントです。

整形と不整形

上記の図を見てください。少し極端な例ですが、見ればわかるように、整形であれば敷地内に建物を収めやすくて有効活用しやすいですが、逆に不整形であれば建物を建てられないスペース、言い換えれば使えない土地部分が生じやすくてマイナス要素になります。建物も土地の形状にあわえて不整形にすると建物内部が使いづらくなります。

また、敷地と道路に段差がある場合、階段やスロープの上り下りが生じ、高齢者にとって毎日の階段が億劫になることもあります。今は高齢ではなくとも将来的に課題になる可能性も考えましょう。

そして、敷地内で傾斜がある場合にも注意が必要です。傾斜が大きい場合、将来の建て替えのときには建物のプランが複雑になって建築コストが高くなってしまうことがあります。必ずしもそうなるわけではありませんが、その可能性は考えておいた方が無難でしょう。

敷地の排水状況・水はけ

次に「敷地の排水状況・水はけ」です。

前述した敷地の傾斜や道路との段差とも関係するものです。敷地内に傾斜があり、その傾斜が道路など敷地外へ向かって下っているのであれば雨水が敷地外へ流れ出ていきやすいですが、なかには勾配が逆になっていることがあります。

そのような勾配が逆になっている住宅では、庭に水溜りが出来てしまい、なかなか水が引かない事例がいくつも確認されています。ある程度の量の雨水であれば地面に浸透していくことがほとんどで、その前提で当初から設計されているわけですが、最近の豪雨には適応できず雨水がいつまでも庭に溜まっていることがあるのです。

道路との段差についても、道路側の方が低いのであれば問題ないですし多くの場合はそうなのですが、なかには敷地側の方が道路よりも低い土地もあります。この場合は、排水溝などで排水計画をしっかり練って対応していないといけません。

排水溝が詰まっていたり、十分でなかったりして豪雨の際に敷地内に水があふれ、最悪は床下浸水などの被害を受けてしまうこともあるため、注意して確認してください。排水溝のつまりについては、段差がなくても大事なチェックポイントです。

境界・越境

境界・越境

大事なポイントの1つとして、境界の確認があります。

境界の確認

敷地の境界には、接する道路との境界や隣地との境界がありますが、道路のとの境界は道路が私道・県道などの公道であればもめることはなく、わかりやすいものです。個人が所有する私道の場合には、ときには境界位置でトラブルになることもありますが、道路と敷地の境が見た目で明確であればそれほど問題にはなりません(もちろん境界杭などの標があることが望ましい)。

隣地との境界については、杭などで明確になっていないと問題となることがあるため、中古住宅購入時の大事なポイントとなるのです。

境界が不明確な場合には、将来的に隣地との間で境界位置の認識のずれが表面化してもめることがあります。法務局に登記された地積測量図で土地の面積が確認でき、境界位置が記載されていたとしても、その境界位置が現場のどこであるかについてもめることがあるのです。

そういった将来のトラブルを無くすためにも、境界が不明瞭であるならば、中古住宅の売買契約を交わす前に「売主の責任と負担で境界を明確にして境界標を設置して頂く」ように交渉することがお奨めします。

越境物の問題

境界と関係する大事なチェックポイントとしては、越境物の問題があります。越境物とは境界線を越えて隣地に存在してしまっている物です。

よくあるものが植栽の越境です。植木などが伸びて隣地まで侵入していることがあるのですが、侵入されている方はあまり良い気がしません。その付近を通る時に邪魔になることもありますし、何かを傷つけてしまう恐れもあります。場所によっては車に傷がつく可能性もあります。

ちなみに、植栽は冬に越境していなくても夏には越境することがありますから、季節のことも考えておきましょう。

他にも雨樋が越境していることもありますし、驚かれる方もいるかもしれませんが、都心部など敷地いっぱいに住宅を建てているところでは、屋根が越境しているということもあります。

越境物についても、境界問題と同様に中古住宅の売買をする前に売主側で対処して頂くのが理想です。植栽であれば売主側で伐採しておいてもらうべきですし、再び伸びたときにも伐採して頂くよう書面で約束を取り付けられれば安心です。

雨樋や屋根などの越境でも撤去して頂くのが一番よいですが、建替え等をするときまではなかなか撤去してもらえるものでもありません。そのようなときには、現状のままでも(越境したままでも)購入予定の物件を使用・居住するうえで問題ないことをよく確認し、さらにその隣地の建替え時や購入した自分自身に必要が生じた時に撤去してもらえる約束を書面で交わしておく必要があります。

境界や越境の問題は現時点で問題ないからと安易に判断せずに、将来の問題の根を早めに取り除いておくことを考えた方がよいでしょう。

擁壁・日照

中古物件購入時の敷地のチェックポイント(擁壁・日照)

中古住宅を購入する時の敷地のチェックポイントとして、擁壁・日照・通風についてです。

擁壁の水抜き穴

まず「擁壁の水抜き穴の有無」についてです。

中古住宅の内見に行きますと、隣地と敷地の高さが違う住宅を見かけることもあるでしょう。丘陵地などによく見られるのですが、傾斜地を切り開いて住宅地とするときにはどうしても段々畑のような形状となってしまうものです。

そのような傾斜地の住宅街では、境界付近に擁壁がある物件は多く、横浜や神戸などでは特に多く見られます(その他のエリアでも非常に多いです)。

擁壁がある場合には、その擁壁が構造的に問題ないか確認したいところですが、現実にはなかなか確認が難しいです。それでも表面に何かひどい症状(大きなひび割れ等)が出ていないか程度の確認はしておきたいところです。

そして、擁壁の水抜き穴があるかどうかを確認してください。水抜き穴は、擁壁の上の土地の地中に浸透した水の逃げ道です。これが無い場合には地中の水分の逃げ場がなく飽和状態になり、擁壁や住宅の基礎へダメージをもたらすことがあります。実際に、これが原因で大きな亀裂が生じたと思われる現場もあります。

購入を検討する中古物件が、擁壁の上でも下でも大きな問題となりうることです。擁壁が崩壊するようなことがあれば大変です。水抜き穴の有無は大事なチェックポイントですが、その穴が完全に詰まってしまっていることもあるので、いくつかの穴を目視で確認しておきましょう。

擁壁の下側の中古物件を購入するのであれば、擁壁の下側に排水溝があるかどうかも確認しておきましょう。水抜き穴から流れ出た水が排水溝を流れて敷地外へ出ていく計画になっていればよいのですが、排水溝が無く購入する土地の敷地内に垂れ流してしまっていることもあるのです。これでは敷地内に水が溜まりやすくなり、大雨のときが心配されます。

なかなか時間的に難しいことも多いですが、水はけのことも兼ねて、大雨のときやその直後に現地を見学することをお奨めします。

日照

次に「日照」です。どの程度、日があたるのか確認したいところですが、丸1日、現地で見ておくわけにもいきません。隣地との建物の感覚が狭くて日照が心配される物件であれば、せめて午前と午後にわけて2度以上の見学をされることをお奨めします。

全く日の当たらない場所の水はけを確認したり、日の当たらない建物の基礎付近にカビが無いか確認したりすることも忘れないでください。

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