建築条件付土地の取引

不動産業者の立場から住宅の販売活動を考えた場合、分譲する住宅をできる限りに早期に契約する(売ってしまう)方が販売コストを抑えることができ、事業計画も円滑で安心できるものになります。

なかなか売れないときには、その事業に投資した資金の金利負担もある(多くの場合が融資を受けて開発・分譲している)ため、早く売りたいのは自然な考えです。

広告の開始時期の制限

しかし、早く売りたいとはいえ、消費者(住宅を購入する人)にとって不利な状況での販売活動は認めらえません。そこで、宅地建物取引業法33条(広告の開始時期の制限)がポイントになります。ここでは以下のように定められています。

「宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法第29条第1項 又は第2項の許可、建築基準法第6条第1項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあった後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならない。」

宅地建物取引業法33条(広告の開始時期の制限)

これを読んでもわかりにくいですよね。

簡単に言えば、「宅地の造成や建物について工事の完了前に売りたくても、行政の許可を受けるまでは広告してはいけませんよ」ということです。「宅地(土地)については開発許可をちゃんととってから」「建物については建築確認がおりてから」ということになります。

広告できないわけですから、取引条件などを示すこともできず契約することもできません。

このことは不動産の表示に関する公正競争規約にも次のように記載されております。

「宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、宅建業法第33条に規定する許可等の処分があった後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の内容又は取引条件その他取引に関する広告表示をしてはならいない。」

不動産の表示に関する公正競争規約

消費者を保護する枠組みが作られているわけですね。

建築条件付き土地の売買が例外に

ただ、住宅の取引を実際に行うにあたって、上の通りに全てを進めていくのは難しい場合もあります。代表的なケースとして、建築条件付土地の取引があげられます。

建築条件付土地とは、建物の着工前(建築前)でプランも決まっていない(もしくは自由に変更できる)場合に土地のみを先行して売買契約する取引のことです(詳細は「建築条件付土地(宅地)の売買の流れと注意点」を参照)。

前述の規定は、この建築条件付土地の取引で、広告に表示する建物の表示に関して以下の要件を全て満たしている場合には適用しないこととなっています。これにより、取引の実情にあわせているのです。

1.以下の事項を見やすい場所・大きさ・色の文字で分かりやすく表示していること
・取引の対象が建築条件付土地であること
・建築請負契約を締結すべき期限(土地の契約から3ヶ月etc)
・条件に合意しない場合は土地の売買契約を解除し、買主から受け取った全ての金銭を返金すること
・建物プランを表示する場合に、それが一例であって買主の希望で自由にプランを選択できること
・上記の建物プランの建築費用やその他の費用

2.土地取引に必要な事項(広告主・所在地・価格等)を表示すること

つまり、建築条件付土地であることを明確にし、建物プランの決定は土地の契約後○ヶ月以内とするかも明確にしなければなりません。そして、建物プランなどで合意できない場合には買主のペナルティなしで解約できる必要があるということです。

これにより、広告することができるわけです。

建築条件付土地の取引といっても、これらのルールを守っていない不動産業者も少なくないので、「建築条件付土地(宅地)の売買の流れと注意点」も読んで注意しましょう。

ホームインスペクションのアネスト

ホームインスペクション
第三者の一級建築士が、住宅購入・新築時などに建物の施工ミスや劣化具合などを調査する。新築(建築途中および完成物件)・中古住宅に対応。安心してマイホームを購入できる。