住宅を購入するときに、ホームインスペクションを利用する人が多いですが、そのインスペクション業者(=住宅診断会社)をどのように探しますか?
購入予定者(買主)がインターネットなどで、自分で探して問合せし、依頼する人が多いですが、仕事などの忙しさから不動産会社に業者探しを任せる人も少なくありません。また、その際に不動産会社から依頼する必要がないなどと否定的なことを言われることもあります。
住宅を購入してから後悔しないためにも、ホームインスペクション(住宅診断)の基礎知識と第三者性の重要さ、そして不動産会社の説明や紹介に注意すべきこととその理由を解説しますので、購入前に読んでおいてください。
ホームインスペクションとは何か
最初に、ホームインスペクションがどういうものであるか知らない人のために、その基礎知識を紹介しておきます。既に理解している人はここを読み飛ばしてもよいでしょう。
ホームインスペクションで建物の状況を把握できる
ホームインスペクション(住宅診断・住宅検査とも言う)とは、住宅を対象として建物の状態を調査するサービスで、それによって建物の状況(コンディション)を把握することができます。新築であっても中古住宅であっても、とにかく既存の建物を対象としたものだと解釈するのが一般的です。
ホームインスペクターとは?
ホームインスペクションは、建物の調査をする業務ですから、建物に関する専門知識と経験が必須で、この業務を行う人をホームインスペクターや住宅検査員、住宅診断士などと呼んでいます。
このホームインスペクターの多くは、建築士の資格を保有していますが、一部では資格を持っていない人が調査していることがあるので、依頼する前に資格は確認しておきましょう。無資格で経験が浅い人のインスペクションでは、調査ミス、判断ミスの確率が高くて、依頼者のリスクが高いといえます。
利用目的
建物の状況(コンディション)を把握したうえで、補修すべきかどうか検討したり、購入すべきかどうか検討したりすることに役立つため、主に住宅購入時にこのホームインスペクション(住宅診断・住宅検査)が利用されることが多いです。住宅購入後に、利用される方も多いです。
独立性・第三者性が重要
このホームインスペクション(住宅診断・住宅検査)は、補修や購入判断といった大事な局面で頼りにするものですから、専門家による「本当の意見」「信頼できる診断結果」でなければなりません。ホームインスペクション(住宅診断・住宅検査)を行う専門家の独立性・第三者性が問われるのは、そのためです。
ホームインスペクションに関する不動産会社の説明・紹介の注意点
住宅購入時にホームインスペクション(住宅診断・住宅検査)を利用しようと考えたとき、不動産会社(売主や仲介業者)の営業マンとこのホームインスペクションについて話すことになりますが、このときに注意すべきことがあります。
不動産会社はホームインスペクションを歓迎していないことが多い
住宅購入時に接する不動産会社にとって、ホームインスペクション(住宅診断・住宅検査)は決して歓迎されているとは限らないという事実を知っておかなければなりません。
買主から「ホームインスペクションをしたい」という話が出たときに、不動産会社の担当者は「診断結果が悪ければ買ってもらえなくなるのではないか」「住宅診断している間に他の人が買ってしまうのではないか(自分に仲介手数料・報酬が入らなくなるのではないか)」といった不安を抱くことが少なくありません。むしろ多いと言えます。
依頼させない工夫をする不動産会社もある
買主にとってはリスクを減らすためのホームインスペクション(住宅診断・住宅検査)ですが、不動産会社にとってはむしろリスクだと考えることがあるということです。
そのような不動産会社(または担当者)は、「ホームインスペクションをやらない」と買主に言わせたい(考え直させたい)と考え、いろいろな理由でホームインスペクションの実施をつぶしにかかります。そのときの不動産会社の説明の一例は以下のようなものです。
不動産会社の説明の一例
- 「ホームインスペクションをする人なんていない」
- 「そんなものは必要ない」
- 「中古住宅は劣化していて当たり前だから、住宅診断の意味がない。」
- 「売主が嫌がっている(拒否している)」
以上のようなフレーズです。
上の1~3は、営業マンの勝手な解釈または事実を曲げた説明であり、信用できないものです。4は本当に売主が拒否する可能性があるのですが、仲介する不動産会社の営業マンが売主に確認もせずに言うことがあるので注意したいところです。
不動産会社の息がかかった住宅診断会社を紹介されることがある
なかには、巧妙に不動産会社の息がかかった住宅診断会社(=ホームインスペクション業者)を紹介することもありますが、買主の立場で意見してもらえるのか疑問です。
長くホームインスペクション(住宅診断・住宅検査)をしているアネストへも、毎月のように不動産会社やリフォーム会社などから「住宅やリフォームの販促にホームインスペクションを利用したいので提携したい。」との話が舞い込みますが、アネストではすべてお断りしています。
それらの提携話の狙いは、「売りたいから」「リフォームを受注したいから」であり、それでは、買主のためにならない可能性がありうるからです。
インスペクション業者の集客が紹介案件ばかりだと危ない
この狙いが悪いわけではないのですが、そういった不動産会社やリフォーム会社からお客様の紹介を受けるようになると、その不動産会社等が大事な取引先になってしまいます。しばらくすれば、その不動産会社等の意向に反するホームインスペクションの結果を出してはいけないようになってきてしまうことがあります。
それは、不動産会社にとって困るような調査結果を出すと、次から紹介してもらえない可能性が出てくるからです。インスペクション業者にとって、仕事の供給元が不動産会社になると、立場上、危なくなってしまうことがあるということです。
ホームインスペクション(住宅診断・住宅検査)を適切に実施して購入等の判断に活かすためには、どれほど第三者性が重要であるか理解しておかなければなりません。
ホームインスペクション業者探しは自分でやるべき
ホームインスペクション業者探しを不動産会社へ完全に任せる方もいらっしゃいます。このときもリスクについて考えておかなければなりません。
不動産会社等から「買主の代理で問合せしています」とインスペクション業者へ電話がかかってくることも多いですが、調査内容・進め方について不動産会社の意向にそうかどうかを気にしている方が少なくありません。
なかには、具体的な症状を説明してどんな診断結果が出るかを確認しようとする方もいます。厳しい結果が出るようならば、もっと表現の柔らかな住宅診断会社を探すようです。もはや、買主のためのインスペクション業者探しではなく、自社のためだけの行動になっています。
ホームインスペクション(住宅診断・住宅検査)の話を持ち出した際に、否定的な言動・行動に出られたときや率先してインスペクション業者を紹介・斡旋すると言われたときには、十分に注意する必要があります。これらの全てが悪いという話ではありません。大事な住宅購入の判断等のためですから、自分で考えて判断し、自分で業者を探す時間をとった方がより良いということです。
本来のホームインスペクション(住宅診断・住宅検査)とは、第三者の立場からの意見を聞くためのものですから、診断さえすれば何でもよいというわけではないことを肝に銘じておくとよいでしょう。