不動産営業マンの給与体系・歩合給

不動産業界の自己都合や裏事情によって、住宅購入者が受ける被害のパターンはまだまだあります。「不動産業者間の物件の奪い合いと買主を焦らす裏事情」では、不動産業者が別の不動産業者との競争があることから、買主にマイナス影響を与えている事情について説明しましたが、同じ不動産会社の内部における営業マン同士の競争の問題もあるのです。

不動産の営業マンの多くは、歩合給で働いています。簡単に言えば、売った分だけ給与が増える仕組みですが、売れなければ給与が非常に少ない仕組みでもあるわけです。

例えば以下のような給与体系の会社(不動産仲介業者)があります。

給与 = 基本給(200,000円) +  歩合給(会社が得た仲介手数料の15%)

上記のケースで、営業マンションが3,000万円の物件を仲介し、買主からのみ仲介手数料を得た場合、その金額は96万円(税別)です。これを月に1件の成約だったとすれば、合計96万円となり、歩合給(15%)は14.4万円となります。

つまり、給与は、基本給(20万円)+歩合給(14.4万円)で34.4万円ですね。実際には基本給や歩合給の料率、その他の条件が会社や営業マンによっていろいろですので、これは1つのモデルケースだと思ってください。基本給が安いほど歩合給が高い傾向にあります。

ちなみに、1件も成約しなければ基本給の20万円だけということになってしまいます。これでは、家族が暮らしていくのは厳しいですよね。それだけに不動産の営業マンは必死です。

営業マンによっては、基本給がなく給与の全額が歩合給となっている(完全歩合制)人までいて、その場合の歩合が40%となっていることもあります。前述の3,000万円の物件であれば、歩合給が38.4万円にもなりますが、「このお客さんが成約すれば、これだけの給与が入る、、、」などと皮算用してしまうのも無理はない環境です。

ちなみに、物件の仲介ではなく自社物件の販売の場合は仲介手数料というものがありません。歩合給は、一律で1物件の販売に対して10万円や30万円などと決められていることもあります。

このような営業マンにとってのライバル(競争相手)は他社とは限りません。同じ物件を同じ会社の他の営業マンが売ってしまうこともよくあるため、社内の営業マンもライバルになるのです。

営業マンがよく言う「他の方が先に買ってしまうかもしれませんよ」は事実かもしれませんが、売っているのは担当の営業マンの同僚や先輩・後輩でもあるのです。社内外に競争相手を抱えていて、且つ自分の給与や暮らしに直結することから、営業マンとしては、少々強引であっても売りたい(契約したい)と考えていることが多いわけです。

なかには、以下のような実例もあります。

住宅を購入するときには、契約をする前に「購入の申し込み」を行います。他の営業マンや不動産業者に先を越されないために、住宅購入検討者の名前を勝手に使用して営業マンが購入申込書を書いて提出してしまうという事例です。

契約ではなく申込ですので、後で撤回しても金銭的なペナルティもないため、このようなことを行う営業マンもいるのです。この時の申込金として5~10万円程度の金銭までその営業マンが支払っていることまであります。それから購入検討者に営業して本当に買ってもらえばいいですし、買ってもらえなくても申し込み撤回すればよいと考えているのです。それだけ競争が激しいということでもあります。

不動産の営業マンにとって、目の前のお客様が報酬に見える、、、というのは言い過ぎかもしれませんが、住宅購入という人生の一大イベントを進めようとしている購入者にとっては、安心しづらい不動産業界の裏事情があることを知っておきましょう。

次は「不動産会社・ハウスメーカーの勝手な都合で強引な住宅の引渡し」です。

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