中古住宅購入とリノベーションとホームインスペクション(住宅診断)

中古住宅を購入した人が、引渡し後にリノベーションすることは多く、今後はより多くの人がリノベーションを前提とした中古住宅購入をしていくことでしょう。また、中古住宅を購入する前には、ホームインスペクション(住宅診断)をする人も多くなっており、こちらも今後、さらに増えていくことでしょう。

中古住宅購入 + ホームインスペクション(住宅診断) + リノベーション

この3点をセットで考える人が多くなっているということですね。

リノベーションを前提として中古住宅を購入する人が、購入前にホームインスペクション(住宅診断)を利用するべきかどうかで悩むことがあります。ここでは、物件種別やリノベーションの内容によって、ホームインスペクション(住宅診断)を積極的に利用するべきかどうかを解説しています。中古住宅の購入を成功させるためにも、お読みください。

中古マンションのリノベーションとホームインスペクション(住宅診断)

一戸建てとマンションでは考え方が異なるため、別々に解説しますが、まずは中古マンションからです。同じ中古マンションであっても、予定しているリノベーションによって判断は異なります。

中古マンションのリノベーションとホームインスペクション(住宅診断)

フルリノベーションなら、ホームインスペクション(住宅診断)は不要か?

中古マンションを購入した後、専有部分(室内)内の全てを取り壊して、一から創り上げていくようなフルリノベーションを考えている場合、ホームインスペクション(住宅診断)を利用するべきでしょうか。

インフィルを撤去するなら室内調査の重要性は低い

マンションの間仕切壁やキッチン・トイレなどの設備、内装などは、建物の主要構造部と分離できるもので、インフィルと呼ばれています。これに対して、解体などのできない主要構造部をスケルトンといいます。スケルトンとインフィルは全く別物で、フルリノベーションをするということは、このインフィルを全て解体撤去して作り直すということです。

中古マンション購入前に実施されるホームインスペクション(住宅診断)では、調査項目の多くが、このインフィル部分ということになります。インフィルの劣化具合などを調査していくわけですが、フルリノベーションをするということは、インフィルを撤去するのですからそれを調査しても仕方ないですね。劣化が激しくても、全く問題なくても解体撤去するのですから。

それでは、フルリノベーションをするなら、ホームインスペクション(住宅診断)が不要かといえば、そう単純な話でもありません。

ユニットバス(UB)の天井点検口から調査

マンションの購入判断のために大事な情報になるものとして、ホームインスペクション(住宅診断)では点検口から主要構造部の症状を確認できることもよくあります。具体的にはユニットバス(UB)の天井点検口から覗いて、目視で確認するのです。

内装材の症状から問題の推測

また、撤去予定の内装材に出ている症状が参考になることもあります。具体的には壁や天井に生じているひび割れ(クラック)の有無やそのひび割れの状況です。ひび割れによっては、構造体がダメージを受けているサインである場合もあるのです。実際に、天井のひび割れの位置・大きさなどから、構造体の問題が疑われた事例もあります。

人で言えば、内臓の疾患まではわからないけれども、熱やくしゃみの程度から、何か重大な病気などの問題を抱えている可能性が推測されることがあるということです。

共用部の調査が参考になる

ホームインスペクション(住宅診断)会社によっては、専有部分しか調査しないということも多いですが、できれば簡易的にでも共用部を調査確認しておきたいものです。

マンションの外壁などの壁、基礎などを簡易的に目視調査をするだけでも、大きな瑕疵の存在が心配されるような症状が確認されることがあります。これは、そのマンションを購入するかどうかに役立つ情報となります。

共用部を詳細に調査するためには、あまりに大きなコストがかかるため、一人の購入者が負担することはできませんし、管理組合の了承を得ることもできないでしょう。現実的にできる対応として、共用部を簡易的に確認するのです。

中古マンションをフルリノベーションするときのまとめ

結論としては、インフィル以外については、マンション購入判断のためにも利用しておいた方が無難です。希望するリノベーションが実施できるものかどうか相談したいのであれば、竣工図書も見てもらって、水周り位置の移動範囲なども相談しておくとよりよいでしょう。

部分的なリフォームなら、ホームインスペクション(住宅診断)が必要

購入する中古マンションの一部のみをリノベーション(またはリフォーム)する予定である場合は、ホームインスペクション(住宅診断)を利用するべきでしょうか。

部分的なリノベーションであるならば、撤去せずに残すインフィルも多いことになりますから、その劣化具合を調査する意義も増しますね。その結果によってはリノベーションのついでに一緒に補修した方が良い箇所などをアドバイスしてもらえることもあり、有意義なものです。

共用部の簡易的な調査と合わせて室内もインスペクションしてもらいましょう。

中古一戸建てのリノベーションとホームインスペクション(住宅診断)

次に中古一戸建てを購入してからリノベーションする場合です。購入前にホームインスペクション(住宅診断)しておくべきでしょうか。

中古一戸建てのリノベーションとホームインスペクション(住宅診断)

これは、リノベーションの規模を問わずにしておいた方がよいでしょう。一戸建て住宅であるならば、内装や下地、設備を解体撤去するとしても、構造躯体は残して工事することになります。その構造躯体に問題があるかどうか、できる範囲で調べておいた方がよいのです。

一戸建て住宅では、床や室内壁、外壁などに表れている症状を1つ1つ確認していくことで、その建物が抱えている問題がある程度分かることも多いです。また、床下や小屋裏を調査することで、主要な構造部を直接に確認することもできます(全ての範囲ではありません)。

仮に、内装、下地、設備を撤去する前提であっても、残す構造躯体に重大な問題があるならば、購入中止と判断することもあるでしょう。そのためにも、調査しておいた方がよいのです。建て替えする予定ならば不要ですが、リノベーションの予定ならば購入前に利用しておきましょう。

リノベーション会社とホームインスペクション(住宅診断)会社は別々にすべき

リノベーションを依頼しようと考えている会社(建築会社やリノベーションの企画会社など)に、購入前の中古住宅の見学に同行してもらう人も少なくありません。

リノベーション会社は、そういった同行サービスを通して顧客の早めの囲い込みを考えています。買主としても、リノベーションの可能な範囲、可能なことなどを相談できるので、便利です。

ただ、リノベーション会社にホームインスペクション(住宅診断)を適切に実行したり、確認された症状から適切な判断を下したりできるかといえば、そうではない会社が多いです。デザイン力、企画力、提案力などが求められるリノベーションと検査能力を求められるホームインスペクション(住宅診断)は、専門分野が異なることを理解する必要があります。

どのようなリノベーションができるか、希望する工事が実施可能かといった相談にはよいですが、インスペクションも希望するならば別の会社に依頼した方がよいでしょう。

 

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