住宅ローン控除と不動産仲介業者の無知・誤解に注意

住宅を買うとき、多くの人にとって頼りになるはずの存在が不動産会社であり、担当の営業マンでもあります。しかし、その営業マンに頼り切ってしまうと損をしてしまうことがいろいろとあります。

失敗の原因は不動産業者の悪意ではない

不動産会社や営業マンに頼って失敗する根本原因は、不動産会社などの悪意によるものとは限りません。無知や誤解によるものが非常に多いです。知識や情報量の問題ですから、営業マンを良い人だと感じたとしても注意しなければなりません。人柄だけでは、良い仕事はできないですからね。

住宅ローン控除に関する無知と誤解

ここでご紹介するよくある不動産会社や営業マンの無知・誤解は、住宅ローン控除のことです。住宅ローンを借りてマイホームを購入する人は非常に多いですが、条件があえば住宅ローン控除が受けられます。住宅ローン減税とも言われておりますが、正しくは住宅借入金等特別控除です。

不動産仲介業者がよくやってしまう住宅ローン控除の誤解や無知などのミスは主に3点あります。

築20年超の木造住宅なら必要なのに

1つ目は、築20年超の木造住宅であるのに、耐震基準適合証明書または既存住宅瑕疵保険の付保証明書の取得の必要性を中古住宅の買主に説明しないということです。うっかり忘れていたということもあるかもしれませんが、必要性を知らずに案内していないことがよくあります。

中古住宅を買う人が住宅ローン控除を受けるためにはいくつかの物件に関する条件をクリアしなければなりません。控除額や条件については「住宅ローン控除(住宅ローン減税)の内容と必要書類、手続き」をご参照ください。

そのなかに、築20年超の木造住宅であれば、耐震基準適合証明書または既存住宅瑕疵保険の付保証明書の取得が必要だというものがあり、これを知らずに説明しないケースです。ちなみに、耐火建築物(鉄骨造の多くや鉄筋コンクリート造が該当するでは築25年超ならば同じようにこの書面が必要です。

買主が知らずに中古住宅を購入して引渡し後にこの事実を知った場合、残念ながら住宅ローン控除を受けられないことになります。条件によっては総額100万円単位で減税される可能性のあるものが、無知や誤解によってメリットを受けられないとは残念です。

築20年以下の木造住宅なら不要なのに

次に、築20年以下の木造住宅であるにも関わらず、耐震基準適合証明書または既存住宅瑕疵保険の付保証明書が必要だと不動産仲介業者から誤った説明を受けている人もいます。これを信用して耐震診断を希望する人もいますが、結果的には不必要だったというケースがあるのです。診断の費用が無駄になりますね。

既存住宅瑕疵保険の付保証明書という方法もあるのに

そして、既存住宅瑕疵保険の付保証明書のことを知らない不動産仲介業者が多く、このことも買主に損をさせていることがあります。前述したように、築20年超の木造住宅などでは、耐震基準適合証明書または既存住宅瑕疵保険の付保証明書が必要なのですが、既存住宅瑕疵保険の知識が無いために耐震基準適合証明書が必須だと説明してしまっているケースです。

耐震基準適合証明書を取得するためには耐震診断の実施が必須なのですが、建物の図面がない中古住宅では耐震診断をまともに実行することが困難です。無理に実行しても耐震評価が著しく低くなってしまい、基準に不適合となる物件が続出してしまいます。

売主が図面を残していない中古住宅は非常に多いため、このことがよく住宅ローン控除を受けたくとも壁になってきました。しかし、今では耐震基準適合証明書だけではなく、既存住宅瑕疵保険の付保証明書でも住宅ローン控除を受けられるようになっているため、このことを買主へ説明して取得してもらう方法をとればよいのです(但し審査があるため不可の場合もある)。

アネストでは多くの中古住宅について、耐震診断や既存住宅瑕疵保険のための検査を実施してきましたが、いずれも不適合となることは多いため、結果的には住宅ローン控除のメリットを受けられない人もいますが、無知や誤解によって可能性を無くすのはもったいないですね。

不動産仲介業者が買主よりも知識や情報を持っているのは確かですが、十分なものとは限りません。不動産仲介業者には、知っておくべきことがあまりに多くてカバーしきれない点もあるのは確かです。買主が自らも学びながら住宅購入を進めていく必要があります。

 

執筆者:専門家

 

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