住宅の雨漏りを自分でも確認できるチェックポイント(建物外部編)

前のページでは、建物内部側(室内側)から住宅の雨漏りを早期発見するためのチェックポイントとして、「住宅の雨漏りを自分でも確認できるチェックポイント(建物内部編)」をご紹介しました。住宅購入時や居住する自宅で雨漏りにあうリスクを減らすために、いずれも大事なチェックポイントばかりでした。

今回は、建物内部編に続いて建物外部編をご紹介します。住宅の外側から確認すべきポイントなのですが、バルコニー(ベランダ)も外部としてご紹介しています。

雨漏りのチェックポイント ~建物外部編~

住宅建物の外部からのチェックポイントは、以下の順で解説しています。いずれも大事なものですし、また建物内部のチェックポイントと連動するものが多いです。建物内部においては、既に雨漏りが発生しているかどうかを重点的に確認する作業ですが、外部においてはこれから雨漏りが発生しそうかどうかを確認する作業のイメージです。

とはいえ、専門家であってもこれから雨漏りが発生することをズバリ言い当てることはできません。あくまで、よく雨漏りが生じる箇所を理解して、その部位の劣化状況などを確認することで、可能性の大きさを考えるのです。可能性が高いと判断しても、全然被害が出ないこともありますし、逆のこともあります。

  • 屋根の劣化状態
  • バルコニー(ベランダ)の笠木・外壁との取り合い
  • バルコニー(ベランダ)に出るサッシのまたぎ
  • バルコニー(ベランダ)のデザイン穴
  • バルコニー(ベランダ)の排水口と床の劣化
  • 陸屋根・屋上はベランダ同様に雨漏りチェックを
  • サッシ周り(特に出窓に要注意)
  • 外壁を貫通する開口部(配管周り)
  • 外壁の継ぎ目(目地)の劣化状態
  • 外壁の大きなひび割れ
  • 排気ダクトからの雨水侵入
  • 基礎の高さと換気口

建物外部のチェックポイントとしては上の項目があげられます。以下で1つ1つ解説していきます。

屋根の劣化状態

最初に挙げる項目が屋根の確認です。しかし、これが最も確認が難しく、いや無理だと言った方がよいかもしれません。屋根材の劣化などによって雨水が屋根の下へと侵入した場合に屋根からの雨漏りの可能性が考えられます。

しかし、屋根材の下にはルーフィング(雨水を侵入させないための防水シート)が施工されているはずで、雨水が劣化した屋根材から下へ回ったとしても屋根裏に雨漏りが生じるわけではありません。

また、屋根を詳細に確認するためには庭やベランダから見た程度ではわかりづらいのですが、そのために外部に足場を設置するのもコスト・手間的に大変ですし、屋根へ登って確認するのもリスクが高いです。このリスクは落下する危険性もそうですが、実は古くなって劣化した屋根材へ登ることで余計に痛めてしまうことも指しています。

屋根裏の雨漏りを確認する場合には、建物内部編でお伝えした屋根裏の確認が重要です。

ちなみに、屋根材が劣化してきた場合、早めに葺き替えることが雨漏りを防ぐ1つの方法です。仕様にもよることですが、10年から50年と非常に幅広いです。最近の建売住宅で多く見かけるスレート葺きの場合は15~20年程度が1つの目安です。

もう1つ屋根の雨漏りについて注意したいのは、太陽光パネルの設置工事です。パネルを設置する際の施工方法・施工品質によっては、これが原因で雨漏りすることがあります。施工後の雨の日には屋根裏から確認することは必須です。もちろん、信頼できる施工会社による設置工事を依頼したいですね。

バルコニー(ベランダ)の笠木・外壁との取り合い

雨漏りの原因の代表格の1つがベランダの笠木です。笠木とは、ベランダの外側の壁(手すり壁)の一番上にある仕上げ材のことです。

大雨のときに雨が笠木の内側へ侵入することもありますが、多いのは外壁と手すり壁が接する箇所からの漏水です。この部分のシーリングの劣化により雨漏りが起こることがよくあります。また、笠木の継ぎ目部分のシーリングにも注意してください。

シーリングがひび割れてきているようであれば、その時点では雨漏りしていなくても、近いうちに雨漏りする可能性を考えておいた方がよく、早めの補修が必要だと言えます。

また、笠木を留めている釘がきちんと絞められておらず、そこから雨水が侵入していたケースもあります。僅かな隙間から侵入するため、肉眼で確認できないことが多いのですが、釘が浮いているようであれば要注意です。

バルコニー(ベランダ)に出るサッシのまたぎ

室内からベランダへ出るサッシ(窓)のまたぎ部分も要注意です。サッシの下側をベランダに出て観察してみてください。ベランダに寝そべるようにして見るか、手鏡を利用して見るとよいでしょう。

サッシ下

この部分の施工が粗い、もしくは劣化によって雨水が内部へと侵入することは多いです。強い雨のときは、意外なほど雨の跳ね返りがあり、こういったところから侵入するのです。

また、ネジの隙間から漏水する事例もよくあるため、ネジの閉まり具合も確認しなければなりません。

バルコニー(ベランダ)のデザイン穴

住宅によってはバルコニーなどにデザイン性を考慮した開口部(穴)が設けられていることがあります。こういった開口部は壁を貫通している以上、雨漏りのリスクが高まります。開口部周りのシーリングの劣化状況を確認しておきたいものです。

ベランダのデザイン穴を外側から確認するのは難しいため、ベランダから手を伸ばしてデジカメで開口部の周囲を撮影するなどして確認するとよいでしょう。

バルコニー(ベランダ)の排水口と床の劣化

次もベランダでのチェックポイントを挙げています。ベランダは雨漏りの宝庫ですね。

排水口

一般的にはベランダの端の方には排水口があるはずです。雨水などを流すためのものですから、この部分には当然ながら多くの水が集まってきます。しかし、この排水口周りが劣化していて漏水してしまうことも非常に多いのです。

わざわざ水をそこへ集めておく構造でありながら、そこが劣化しているのは当然ながら危険です。早期の補修が必要ですね。

また、排水口に枯れ葉などが溜まっている住宅も多いですが、水が詰まりやすく漏水を引き起こしてしまうことおるため、自宅であれば普段からまめに清掃しておくようにしましょう。

ベランダの最後にご紹介するのは床の劣化です。ベランダには雨水が大量に入ってきますが、床面は防水層によって守られています。しかし、これが劣化してくることで雨水が侵入してしまうので、床面の劣化には気を付けたいところです。

床表面は仕上げ材であって防水層はその下側にありますから、仕上げ材が破れていたり、剥がれていたりすると注意したいところです。その下の防水層まで傷んでいないか確認しましょう。

陸屋根・屋上はベランダ同様に雨漏りチェックを

陸屋根をご存知でしょうか?今ではフラットルーフとも呼ばれていますが、その名の通り平坦な屋根です。形状としては大きなベランダというイメージになりますが、それだけにチェックポイントはベランダと共通します。

屋上

笠木や排水口、仕上げ材などを同じようにチェックすることです。

屋上のある住宅もそうですね。屋上へ室内階段から上がれるプランであれば、その階段室から屋上への出口のまたぎ下も要注意です。

サッシ周り(特に出窓に要注意)

ベランダと同様に雨漏りの原因箇所として多いのはサッシ周りからの漏水です。建物内部編でもサッシ周りの染みを確認するよう記述しましたが、外部からはサッシ周りのシーリングの劣化状態を丁寧に確認しましょう。

サッシのなかでも最も漏水しやすのは出窓です。出窓の上側(外壁と接触する部分)から雨水が侵入しやすいため、入念に確認した方がよいでしょう。

外壁を貫通する開口部(配管周り)

サッシ周りから雨漏りが生じやすいのは、外壁を貫通している箇所だからですが、同じ意味で配管などが外壁を貫通している箇所も生じやすいです。開口部は基本的に全て注意したいのです。エアコンスリーブの周囲からも同じです。

配管周り

これまでに雨漏り調査をしてきた事例のなかでは、外部から室内へケーブル等を引き込む工事をしたときに、外壁内部の防水シートを破り、雨漏りしたという事例もあります。同じケーブル会社の同じ事例(引き込み工事のミス)に遭遇することもあるのですが、社内で雨漏りトラブルの事例を共有して防げば無駄な補修費負担もなくなるのにと思うことがあります。

外壁の継ぎ目(目地)の劣化状態

継ぎ目

外壁の仕上げ材がサイディングやタイルである場合などには、その目地の劣化状態は重要です。目地のシーリングが劣化しているようであれば、早めの補修を心がけましょう。ちなみに、サイディング材そのものの欠損によって雨漏りを起こす可能性も無くないですが、そういった事例は少ないです。

建物の角の部分も雨漏りが起こりやすいので、入念に確認すべき箇所です。

外壁の大きなひび割れ

外壁のサイディング貼ではなくモルタル等の塗装仕上げである場合、外壁面のひび割れが大きいと雨漏りが生じる可能性も考えましょう。ひび割れ=雨漏りというわけではありませんが、可能性は考えておいた方がよいです。

何度も記述しているように外壁内部には防水シートがあり、そこで雨水の侵入をとめているわけですが、防水シートの施工品質などによっては、防水シートの継ぎ目部分や破れた箇所、そしてサッシ周りなどから雨水が内部へと入ってくることがあるのです。

建物内部のチェックでもサッシ周りの染みが多いと記述しましたが、サッシ周りから外壁内部へ侵入するとは限らず、他の外壁面や上階から壁内を流れてきて、最終的にサッシ周りで室内側へ漏ってくることも多いのです。

排気ダクトからの雨水侵入

いろいろな雨漏り原因とチェックポイントを挙げていくうちに、次から次へとあれもあった、これもあったと思い浮かんでしまい随分と長文になってしまいました。

ここで挙げる事例は、排気ダクトからの雨水の侵入です。キッチンの換気扇から水が滴ってくるという相談を受けて現場へ行くと外壁に取り付けられた排気ダクトからの侵入だったことがあります。排気ダクトの周りのコーキングが劣化してそこから侵入ということもありますが、このときはダクトの内部へと侵入したケースです。

台風などの強い風を伴う雨の時には、予期せぬところから雨水が侵入することがあります。次の「基礎の高さと換気口」で取り上げるケースも同じようなケースです。

基礎の高さと換気口

日々、多くの住宅診断(ホームインスペクション)をしているといろいろな物件に遭遇します。それがノウハウともなっているのですが、以下のような住宅がありました。雨漏りとは少し異なる話です。

基礎の周囲には土間コンクリートが施工されていることも多いです。土を埋め戻したうえに土間コンクリートを施工するのですが、この土間コンクリートの位置が高すぎて基礎が外部からは低く見えるのです。

基礎

見えるだけではなく、実際に土間コンクリートの表面から基礎の天端(一番上の位置)まで10cm程度です。この場合、強い雨や強い風を伴う雨のときには、基礎の天端の隙間から雨水が床下側へ侵入することがあります。

もっとひどい住宅では、基礎にある換気口(長方形の開口部で網が貼られているもの)と土間コンクリートの表面の高さが1~2cmというものを見たこともあります。普通の業界人なら、非常に驚くところですが、そういった物件を平然と販売していることもありますから、注意が必要です。

雨水が大量に床下へ入る可能性があり、床下環境の悪化、カビ、木部の腐食・腐朽などの影響が考えられます。

雨漏りと結露の勘違い

ここまで雨漏りのチェックポイントを見てきました。雨漏りに気づかず、長期間、放置しておくとカビ・腐食等の二次被害が心配されるため、早期の対応が必要です。さて、ここでは雨漏りについて少し異なる角度の話をご紹介します。

結露を雨漏りだと誤解する人は多い

住宅診断(ホームインスペクション)をしていると住宅に関する様々な症状のご相談が入ってきますが、「雨漏りしているんです!」とお電話があったものの、実は結露だったということはよくあります。

結露だから大丈夫というわけではなく、継続的な結露は何か対策をした方がよいのですが。

例えば、サッシ周りで雨漏りが多いと記述しましたが、サッシ周りは結露も多く、また水滴が多いこともあるため雨漏りと考えやすいようです。中古住宅の売買で売主に瑕疵担保責任を追求できるのは雨漏りであって結露ではありませんから、冷静な対応が必要です。

「雨漏りしているから補修して!」ではなく、「雨漏りの可能性もあるので確認して」ということですね。

意外と給排水管からの漏水もある

建物内部のチェックポイントで天井や壁の染みをあげました。しかし、これも雨漏りとは限らず結露の場合もあれば、上階の給排水管からの漏水ということもあります。これを見極めるのは難しい場合もありますが、できれば被害箇所(天井など)を部分的に開口して、上階で水道を使用するなどして確認したいところです。

 

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