年末に新築住宅の引渡しを受けるときの注意点

いよいよ2016年もあと少しで終わります。年末は多くの人が忙しくしているようですが、住宅・不動産業界でも一部では相当に忙しくしている会社があります。特に、新築住宅の完成と引渡しの時期をこの年末に予定している現場では、鬼気迫るようなところもあります。

 

年末に行う住宅の引渡しはトラブル遭遇率が高い

12月12日~25日あたりに、引渡し前の買主による完成検査を行っている住宅では、多くのトラブルを抱えたままトラブルとなることが予想されます。これは、毎年のように起こっている業界問題ですね。

12月は10月や11月、そして1月に引渡し予定である住宅に比べて、明らかにトラブル遭遇率が高いです。年末の引渡しに関連してトラブルが起こりやすい理由は単純で、売主も買主も無理に引渡しを急ごうとするからです。

 

未完成の新築住宅の引渡し

よくあるトラブル事例の1つが、未完成の住宅を強引に引渡そうとする問題です。新築の建売住宅を購入した場合、買主が建物本体や外構などの契約対象物の完成状態を確認してから、その売買代金の残金を支払い、それと同時に引渡しを受けるものです。

しかし、工事が遅延している住宅では、未完成であるにも関わらず引渡しを行うケースが散見されています。しかも、未完成なのに売買代金だけはきっちり請求して全額を支払ってもらっているということが多いです。

売主は12月が決算月になっていることも多いため、決算に間に合わせる目的で強引な引渡しを画策します。また、一方で買主も既に引越し業者を手配していることや現住居の賃貸契約が切れる関係で何とか引渡しを受けようとします。

未完成の新築住宅の引渡しを受けてしまった場合、その後の工事(完成までの残工事)が遅くなったり、施工不良が増えたり、補修すべき点を指摘しても対応が十分でなかったりと問題が増えていくことがよくあります。これは、売主にしてみれば残代金の全てを入手した安心感も影響しているといえます。

また、11月や12月に完成物件を引渡しで切るはずだったものが、遅延したわけですから、工事管理などに問題があって、未完成物件の引渡し後も遅延しやすい現場だということもあるでしょう。

 

突貫工事で施工不良が多い

12月の引渡しは売主も買主も厳守したいという想いを持っていることが多いため、工事が遅延しても年内引渡しを実現することを最優先して、工事が雑になってしまうことがあります。無理な突貫工事をすれば、施工不良が生じやすいのは誰でも想像できることですね。

 

新年早々に施工不良の対応について売主との交渉が大変

施工不良の多い物件を年末に引き渡された場合、ストレスを抱えたまま年越しをしてしまうことになります。そして、年明けと同時に施工不良の是正・補修を売主に求めていくことになり、新年早々、あまり良い気分ではありませんね。

 

 

年末に住宅の引渡しを受けるときの注意点

年末に引渡しを受けるとき、買主は何に注意しておけばよいのでしょうか。よくあるトラブルを防ぐための対応が必要なわけですが、特に大事な注意点をあげておきます。

  • 未完成物件の引渡し時に残代金の全てを支払わない
  • 無理に年末に引渡しを受けず、工事を急かさない
  • 引渡し前のチェックは細心の注意を払って行う

上の注意点について解説していきましょう。

 

未完成物件の引渡し時に残代金の全てを支払わない

年末に行われる住宅の引渡しで生じるトラブルのなかでも、リスクが高いのは未完成物件の引渡しです。未完成物件であるにも関わらず、代金の全てを請求されて支払ってしまったという人から相談を受けたことが何度もあります。

未完成であるならば、そもそも引渡しを受けてはならないという前提があるのですが、それでも買主側のやむをえない事情もあって引渡しを受ける場合は、せめて代金の一部を支払わずに残しておくべきです。

たとえば、総額4,500万円の物件であったとして、手付金を450万円支払っているとします。残りの4,050万円を完成後、引渡し時に支払うのが本来の流れなのですが、未完成物件の引渡しを受けるときには3,600万円を支払い、残りの450万円を支払わずに残しておきます。

上の例では、450万円(総額の10%)としていますが、それは残りの工事がどの程度であるかを考慮したうえで売主と相談して決めるようにしましょう。全額の請求をしてきたとしても、それには応じず、買主(自分)の保護をしておくことをお奨めします。

 

無理に年末に引渡しを受けず、工事を急かさない

年末に入居したいからといって、工事を急がせるのは得策ではありません。それにより、突貫工事を行って施工不良が増え、入居してから後悔した人の話を何度聞いてきたかわかりません。

年末に引渡しを受けられずに、損害が生じる場合には、その損害の賠償をしてもらうほうがよいでしょう。契約書では違約金を定めているはずですから、契約に則って請求してはいかがでしょうか。もちろん、違約金を請求できるのは契約で定めた日程よりも完成や引渡しが遅れた場合です。年明けの1月が引渡し日と契約で決めているのに、買主の一方的な都合で年内の引渡しを求めても無理があるでしょう。

 

引渡し前のチェックは細心の注意を払って行う

年末はどこの建築会社も忙しく、施工が荒くなる確率は高いものです。そのうえ、工事が遅延している現場となれば、施工不良は起こりやすいものです。時期に関係なく、買主は完成後・引渡し前の完成検査で丁寧にチェックすべきなのは間違いありませんが、年末ならば細心の注意を払ってチェックした方がよいです。

建物の外部も内部も床下や小屋裏もチェックする必要があるでしょう。第三者のサービス(内覧会立会い・同行サービス)を利用してもよいですね。

 

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