住宅の結露の原因(使い方と通気口・排気口不足)と注意点

住宅を購入してから生じることのある悩み、トラブルの1つに結露があります。気密性の高い住宅ほど室内側に生じた結露に気づくことが多いものです。昔の住宅は最近の住宅ほどに気密性が高くないため、結露がひどくありませんでした。しかし、今では冬場の結露が悩みとなっている人は多いのではないでしょうか。

結露は、室内だけで起こるものではありません。床下や屋根裏、壁の内部でも起こることがあり、こういった見えない場所の結露にはすぐには気づかず建物が受けるダメージが大きくなってしまっていることもあります。

結露問題の重要性を認識して、結露が生じる原因を理解することで、せっかく購入した住宅の寿命を縮ませないようにしましょう。ここでは、そのために必要な知識・情報を解説しています。

住宅の換気・通気は非常に重要

結露とは、空気中の水分が水滴となって現れるもので、温かい空気が冷やされたときに出てきます。この結露で住宅の寿命を縮めないためにも、まずは結露問題の重要性について解説します。

換気・通気不足で結露被害が非常に多い

住宅診断(ホームインスペクション)では劣化状態や施工ミスを診断するものであって、プランや仕様の良し悪しをチェックするわけではありませんが、外壁や小屋裏の換気が心配になり、対策を講じるようアドバイスしたくなることがよくあります。

これは、新築でも中古住宅でもあることで、中古住宅ではすでに結露被害にあってしまっているケースもよく見かけます。また、自宅が結露被害にあっている人から結露の原因調査を引き受けることもよくありますが、換気に問題があることが非常に多いです。

結露は2次被害も多いので要注意

結露の怖いところは、その2次的な被害です。水分が付着した箇所でカビが生じることがありますし、木部に付着したままになっていると木部の腐食が進んでしまうこともあります。天井に染みがあったので雨漏りだと思って屋根裏を覗いてみたら、大量の結露が生じていて、カビが繁殖していたということはよくある悲惨な状況です。

カビや腐食の進行によって劣化が進んでいくことで、主要な構造部分が著しく劣化してしまい、その解決(補修工事等)にかかるコストが大きくなることもあります。結露ぐらいはたいした問題ではないだろうと軽く考えることはリスクが高いので、注意深く検討して対策を取る必要があります。

結露が生じる原因

次に結露が生じる原因について解説します。いくつもの原因が考えられますが、ここでは代表的なものをあげているので、該当しそうなものがないか考えてみてください。

部屋の使い方で結露が生じやすいこともある

自宅で結露が生じたとき、何か建物に問題があるのではないだろうかと疑うのは仕方ないかもしれませんが、実は建物の構造的な問題や施工ミスなどではなく、そこで暮らしている人の使い方に原因があるということも少なくありません。

よって、自宅で結露がひどい場合には、まずは住まいの使い方に問題が無いかチェックするところからはじめるべきでしょう。

よくある住まいの使い方が原因となっている結露を紹介します。

  1. 24時間換気を使用していない
  2. 窓の開閉をせず空気の入れ替えをほとんどしない
  3. 室内の湿度が十分であるのに加湿器を使用し続けている
  4. 和室の内障子でサッシと障子の間に結露が生じる
  5. 出窓とカーテンの関係で結露が生じる
  6. アルミサッシは結露が生じやすい

上の6点について順に詳しく見ていきましょう。

1.24時間換気を使用していない

結露は、空気が循環しないところで起こりやすいものです。最近の住宅には、24時間換気システムが付いており、建物外部の空気を内部へ取り込み、内部の空気を建物外部へと排気するようになっています。多くの住宅では、内部の空気を強制的に排気することで、外部の空気が給気口から入ってくるようになっています。

24時間換気のスイッチ

浴室付近などに設置されている24時間換気のスイッチ(上の写真)をONにすれば、強制的に排気が始まります。多くの住宅では浴室天井(下の写真)からダクトを通して外部へ排気しています。

浴室天井の換気設備

強制的に排気すると建物内の気圧が下がるため、外壁面などに設置されている給気口(下の写真)から外部の空気を自然と取り入れるようになります。これを第3種換気と言いますが、別の換気方式の建物もあります。

室内壁の給気口

この24時間換気を電気代がもったいない、もしくはその利用価値を理解していない等の理由で使用していない人がいますが、これを作動させるだけで結露問題が解決したという事例も数多くありますのでぜひ試してください。スイッチを入れるだけではなく、給気口を開けておく必要があるので注意してください。

2.窓の開閉をせず空気の入れ替えをほとんどしない

窓の開閉

古い建物である場合、24時間換気システムがありませんので、普段から換気に気を遣う必要があります。単純に窓をあけて風通しをよくしておけば、換気できますからぜひ実行しましょう。

防犯上等の理由で締め切っている家も多いですが、結露対策の点ではマイナス要素です。防犯も大事なことですから、総合的に判断しましょう。

3.室内の湿度が十分であるのに加湿器を使用し続けている

加湿器を利用している人は多いでしょう。特に冬は必需品となっているのではないでしょうか。この加湿器ですが、過度に使用しすぎると室内の湿度をあげすぎてしまい、結露を引き起こしてしまうことがあります。冬に家族で鍋をしたらサッシがもの凄く結露したという経験をお持ちの人も少なくないでしょう。

4.和室の内障子でサッシと障子の間に結露が生じる

結露は空気の循環が悪いところで生じやすいものです。和室のサッシの内側に障子がある場合、その障子を締め切っていると障子とサッシの間の空気が循環しませんね。そうなれば、そこで結露が生じやすく、サッシや建具廻りの症状が現れやすいでしょう。

障子を少し開けておき、空気が流れるようにしておくと結露を抑えることができるでしょう。

5.出窓とカーテンの関係で結露が生じる

出窓のあるスペースで、カーテンを壁面に設置していることもあります。その場合、カーテンとサッシの間の空間の空気循環が悪くなり結露することもあります。カーテンなら空気が流れると思うかもしれませんが、意外なことにカーテンを開けておくだけで解決した事例もあるので、出窓結露で悩んでいるなら試してみるとよいでしょう。

6.アルミサッシは結露が生じやすい

冬季においてはサッシのアルミ枠が冷たいため、温かい空気がそこに触れることで結露が生じやすくなります。

アルミサッシの結露

ちなみに、サッシの下枠に結露水を外部へ排出するための水抜き穴があり、ある程度の結露ならば問題とはなりませんが、大量の結露が生じたときには建具に染み跡が残ることがあります。

また、最近はペアガラス増えているため、ガラス面の起こりづらくなっています。

屋根裏の通気口・排気口が無く換気不足

木造住宅で見つかることのある結露の話を取り上げます。それは、屋根裏の換気不足により、小屋裏で結露被害が出ている住宅もあるというものです。この場合は、深刻な被害にあっていることもあり、住宅診断(ホームインスペクション)で屋根裏の調査をしたときに驚くべき状況になっていた住宅もあるのでよく確認しておきたいポイントです。

屋根の形状が4方向に傾斜のある寄せ棟の場合は、軒裏天井に通気口又は孔明きボードを使用して通気を図り、棟部分に排気口を設けた施工が一般的な工法です。軒裏天井の通気口の数(面積)が不足した場合が結露の原因になると思います。

切妻屋根の場合は妻面の棟付近の壁に通気口を設ける施工が一般的な工法ですが、妻面の両方に通気口を設ける事が重要です。片側のみでは空気の流れに偏りが生じてしまい、結露の原因となることがあります。

切妻屋根の通気口の事例

最近の住宅では軒の出寸法が少ない(もしくは無い)設計がよく見られますが、このような形状の場合は壁の頂部と軒先が接する箇所に通気機能を持たせた製品を設置して屋根裏の通気を行うようにすることが多いです(他の方法もあります)。しかし、これらの通気口が無い住宅もあり、やはり結露の原因となっていることがあります。

ちなみに、小屋裏の通気口も上の写真のようなものとは限らず、以下のようにいろいろなものがあります。

小屋裏の換気

設計者が通気のことをよく考えて通気口、排気口を設ければよいのですが、換気の見通しが甘くて不十分なケースが散見されます。また、現場で施工する施工会社も建築時に気づけばよいのですが、そこまで考えていないことも多く、結露被害が出てから気づくことも多いのです。

屋根裏の通気口

ちなみに、図面には通気口等について詳細が記されていないことも多いです。そういうときでも、施工会社がきちんと考えて対処すればよいのですが、通気口の重要性を理解していない業者が多いようです。

結露が大量に生じても、通気口や排気口の不足が原因だと想像もしていない業者もあることから、なかなかこの問題はなくなりそうにありません。

小屋裏の結露被害の事例

小屋裏で生じた結露は、しばしば雨漏りと誤解されることがあります。一見しただけでは、結露なのか雨漏りなのか判断できないことも多いものです。

屋根野地板の結露の事例

屋根材の裏側にあたる野地板や垂木などに染みが見られますが、結露です。小屋裏換気が不十分で建物の劣化を早めてしまっています。

屋根裏の結露の事例

この写真も小屋裏の結露で木部が腐食しているところです。住宅購入者は結露に関するところもチェックしたいところですし、設計者や建築関係者も結露の重要性をよく考慮して設計、建築してほしいものです。

施工ミスでも生じる結露問題

通気口を防水シートで塞いでしまっている施工を確認したことがあります。屋根工事業者が通気口の存在を知らずに施工してしまったようですが、現場監督が把握して下請け業者へ伝えておけば防げた事例です。

また、断熱材が設置されていないために生じる結露もあります。

 
 
新築住宅を購入するときには、屋根裏の換気がどうなっているか売主から十分に説明を受けてください。中古住宅ならば、売主個人や仲介業者は理解できないですから、自分で通気口と排気口の位置を確認したいところです。

そして、実際に結露が生じたときには使い方に問題が無いか点検したうえで、建物プラン上の問題がないか通気口・排気口の位置を確認しましょう。

 

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