築30年弱の中古木造住宅の診断(ホームインスペクション)の現場レポート

こんにちは。アネストスタッフの利光です。アネストでは、第三者の立場で住宅診断(ホームインスペクション)などの住宅購入サポートをしています。今回は、中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)の現場レポートを致します。

今まで新築の住宅診断へ同行したことがあったのですが、中古住宅での診断は初めてです。今回はすでに空家となっている物件の検査に同行させていただくことになりました。

清水正勝

今回の診断を担当していただいたのは、一級建築士の清水正勝さんです。

住宅診断(ホームインスペクション)の実施前

今回は清水さんからお客様への事前のご連絡の際に、現地に10分前での待ち合わせとなっておりました。

お伺いする方法は、公共の交通機関を利用するか、又は車で伺っておりますが、近隣の駐車場の有無や、サービス内容等で、担当者が判断いたします。今回の検査では、電車とバスを乗り継いて現地へ向かうこととなりました。

私と清水さんは駅のバス乗り場で待ち合わせをし、現場へ向かいます。

現場に到着すると、お客様はまだいらっしゃっておりませんでした。少しお時間があったため、外周すべてを確認できるかどうかや屋根の状態を目視できるかどうか、外壁等の状態も確認しながらお待ちしておりました(敷地内へ入らずに待機している状況です)。

屋根へ登っての調査はしていないため(対象物件が陸屋根であって、階段や備付け梯子で屋上へ上がれる建物である場合は調査対象となる)、屋根の状態は「少し離れたところから少しだけ確認できるかな」といった状況でした。外周はすべて確認できるスペースがありそうでした。

そうこうしている間にお客様が到着されました。

名刺を渡してご挨拶をした後、一旦室内へ入って荷物を置き、調査開始です。今回の私の同行にご了承・ご協力いただきましたお客様、ありがとうございました。

建物外部の診断(インスペクション)

先に外部より確認することとなり、再度外へ出ます。

お客様は、購入後にリフォームを考えておられるようで、リフォームの見積書も合わせてご持参されており、外壁の塗り替え、屋根の吹き替えをされる予定である旨を伺いました。

現状では瓦の屋根でしたが、その屋根をアスファルトシングル葺きにされる予定 で、その相談をいただきました。

外部では、基礎周りや外壁、軒裏、雨樋を見ていきます。

基礎部分の確認では、打診棒を使って、表面仕上げ材に浮きがないかをチェックしていきます。打診棒というのは、以下の写真で清水さんが持っているものです。

打診棒で調査

黒板を指す際に使う指示棒の先端が丸くなっているようなもので、基礎の表面に当てて
転がすように確認していきます(強く打診すると基礎表面が割れるリスクがあるため)。これによって音が鳴るのですが、表面の仕上げと基礎コンクリートの間に空洞があるときには、この音が変わります。

この住宅でも、一部で音の異なる個所がありました。お客様にも一緒に音の違いを聞いて頂くことで理解して頂きました。

空洞がある場合には、仕上げ部分にひびが入りやすくなっているため、今後も注意してみていくことが大切となる旨の説明をしました。

また、基礎には換気口がありましたが、換気口から目の前の塀までの距離が近く換気的にはあまりよくない個所がありました。

お客様が、換気口と近い個所の塀については、そもそも撤去することを検討されていたようで、「換気面でも有効ですね」というお話をいたしました。ただ、リフォームの見積もりが思っていたよりも高くなっていたため、塀の撤去の優先順位を下げて、撤去せずにそのままにされるかもしれないとのことでした。

外壁についても、リフォームで塗り直しをされるとのことでしたが、現状でひびがある
分についての説明と確認をしていきました。外壁のひびは、窓の両隅や、シーリングされている個所等に発生していました。

境界の確認

弊社では隣地境界についても確認しておりますが、これは境界の位置が明確にわかるような境界票があるかどうかを確認するものです。

お隣の家との距離が近い個所があり、隣の家との間にある塀の塗装の吹き分けにより、塀の真ん中が境界であろうと推測し、ただしその通りでない場合もあるので確認が必要とお伝えしました。

また、その境界であろう個所の上部を見上げると、両方の雨樋が少しずつ越境しているような状態でもありました。

境界が不明瞭のままであるとどのような影響があるのかとお客様よりご質問をいただきました。これについては、「たとえば、間の塀が壊れた場合、どちらの負担で補修する必要があるか等でもめたりすることなどもある」とお伝えしました 。

境界がはっきりしていないと、近隣トラブルにつながる場合もあり、境界を確認し現状を
理解しておくことは重要ですね。

建物内部の診断(インスペクション)

外部の診断(インスペクション)を一通り終えると次は室内へ移動します。

今回の中古一戸建て住宅診断では、対象建物が空家で荷物等もない状態でした。空家となっている期間も長かったと伺いました。

室内については、部屋ごとに目視確認できる個所を順番に検査していきます。

床の傾斜測定で大きな傾きを発見

まずはリビングから。

ここでレーザー水平器を使用します。

床の傾斜測定

上の写真は、清水さんが実際に床を測定しているところです。垂直方向と水平方向にレーザーの光が出ています。レーザー光のある2つの箇所を測定して、 測定した数値の差で傾きを調べます。

通常、床(水平方向)は、距離がとれる場所では測定距離を3メートルにして測定しますが、家具等で距離が取れない場合等もあります。今回は距離が取れませんでしたので2メートルの距離にて測定しました。2メートルの距離の測定値で25ミリの差がありました。12.5/1000とかなり大きな傾きが測定されました。

清水さんも今まで調査してきた経験のなかでも、かなり大きな傾きであると言っていました。

ちなみに4カ所の傾きを測定し、どの傾きも一方向(同じ方向)へ傾いていることが分かりました。

傾きについては、軟弱地盤のために建物が沈下して傾いている場合もあれば、下地材や基礎の状態の不具合で傾いている場合などの理由が考えられます。

傾きの原因については住宅診断(ホームインスペクション)で特定するわけではありませんが、他の箇所の傾き状況、外壁・内壁の状況、床下状況などから、ある程度、推測できることがあります。

この傾きによるリスクが高いものかどうかを検討するためには、床下状況の確認が必要だと言えますが、床下の詳細調査(オプション)を追加依頼することをお客様が判断され、実施することとなりました。

床下の詳細調査(オプション)は、住宅診断(ホームインスペクション)を依頼するときまでに前もって現地で利用有無を判断したいとお申し出頂ければ担当者が対応できるように準備しているのです。

室内壁のひび割れ・建具の動作不良などの劣化事象

傾きの調査ののちに、室内を目視にて確認していきました。

クロスにはひび割れが見られる個所がありました。経年劣化で、石膏ボードのつなぎ目箇所からひび割れが入ってくることが多いですが、今回の物件でも石膏ボードにそった直線のひび割れでした。

今回はクロスも張り替えられる予定のため、クロスのひび割れはなくなるものの、ここのひび割れは年数がたてば出てきやすい個所とのことでした。

建具の動作確認も行います。窓やシャッターの動作確認、鍵のかかりやすさ等を順番に
確認していきましたが、開閉時に音が鳴る個所や開閉が重いところがところどころにあり、建具動作も劣化と判断されました。

キッチン・洗面室・浴室・トイレ・和室

続いて、キッチン、洗面、お風呂、トイレ、和室と見ていきました。

水回りでは、お水が使えたため、ある程度流し続けた後に、下の配管の様子を確認しました。 キッチンと洗面台はリフォームされるご予定とのことでしたが、念のためこちらも確認していきました。 その結果、給水・排水の状況については問題ございませんでした。洗面台のシンク下部に水シミが見られましたが、その他不具合はありませんでした。

キッチンでは、現在対面式のところを壁付けのものに変えられる予定とのことを伺い、冷蔵庫の位置はどうするのか、給湯のスイッチ等の場所をどうしたらよいか等のアドバイスをいたしました。

ちょうどキッチンの床に床下点検口があり、壁付けのキッチンに変えると点検口が開けられない状態になるようでしたので、やはり床下点検口は入居した後でも必要な旨をお伝えしました。

キッチンの点検口がふさがるのであれば、和室の床下地に点検口をあける等が良いのではないかとの他の解決策についてもアドバイスしました。

お風呂場は2~3年前にリフォームされていたようで、劣化状況もリフォームの施工品質も問題ございませんでした。

お風呂場には天井点検口があり、1階の上部(天井裏)が見られる状態になっています。脚立を利用して、天井の様子を確認します。お風呂場の新設時に壁の筋交いをとっているかもしれないとのご不安点をうかがっていたため、その個所も合わせて確認しました。

天井点検口から調査

目視できる範囲では筋交いの一部が確認でき、撤去されたという様子はありませんでした。

お客様にも気を付けていただきながら、天井の様子を覗いていただきました。

自宅のお風呂場の天井裏は見たことがないですよね。なかなかこういう機会がないと見ない個所ではないでしょうか。

1階の和室においても傾きが確認されました。リビングの傾きまではいかずとも、経年劣化以上と思われる傾きが見られました。また、リビングと同様にクロスのひび割れも見られました。

シミのような斑点が複数個所で見つかりました。長期間空き家だったため、あまり換気されずに結露によってカビが生えているのではないかと推測いたしました。

2階

続いて2階のお部屋も見ていきます。こちらでも各部屋を詳しく調査していきます。

リビングの床の傾きが気になったこともあり、2階の部屋の傾きについても細かく調査していきました。どのお部屋もリビングほどの傾きではありませんが、一定の方向に向かって傾いている様子でした。

その他にも経年劣化の症状が随所に見られました。

インスペクション

また、天井にシミがある部分もあり、こちらは屋根裏の様子を確認することとなりました。

2階で特に重要なのが、バルコニーです。

雨漏り等の不具合でもバルコニー部分が漏水の原因となっている場合が多くあります。防水状況がしっかりしているか、確認できる範囲で見ていきましたが、経年劣化により防水層の劣化が激しく、早々に補修すべきだという判断となりました。このとき、補修方法も口頭でお伝えいたしました。

屋根裏の調査

次は屋根裏の調査です。

今回の物件では、屋根裏収納があり、収納へ入れる梯子があるため、そちらを利用して内部へ上がっていきます。

屋根裏の点検口

上の写真は屋根裏収納へ上がるための梯子を下ろそうとしているところです。

備付け梯子で上がることのできる屋根裏収納がある場合、その収納部分の調査は住宅診断の基本料金の範囲で確認可能ですが、収納部分の面積を延床面積に加算し、150平米超となる場合には、追加料金がかかります。

屋根裏内部では、和室で気になっていた天井のシミの上部を確認しましたが、雨漏りをしているような様子はありませんでした。残念ながら原因は不明です。インスペクションは万能なものではないため、原因不明の症状だという診断結果となることもあります。

その他の箇所で屋根面に雨漏りのシミと思われる個所がありました。こちらについては屋根の吹き替えののちも定期的に確認して水が漏っていないか確認されることをお勧めました。

床下の調査

そして最後に床下の詳細調査を実施しました。

まず、台所にある床下収納庫の蓋を開けます。その中にある収納するための箱を取り出した後、床下へ潜る準備を始めます。以下が収納用の箱を取り出すところです。

床下収納庫のボックス

居住中の物件の場合、床下収納庫へ入れられている物を整理、または違うところへ移動していただいているとスムーズですね。今回は、空家だったため、簡単に取り外せました。

床下調査のための着替え

全身汚れてもいいように、簡易な作業着を上から着ています。

床下調査の着替え完了

作業着を装着完了です。完全防備ですね。床に青いシートが見えますが、床下から出てきたときに作業着の汚れが床に付着しないようにするためです。

準備をすませるてから、床下へ進入していきます。

床下スペースを見たことはあるでしょうか。地面から30~40センチ程度(物件によって異なり、50cm程度の場合もある)の高さしかないスペースを這うようにして進むのですが、調査や写真撮影をしながら進んでいきます。

清水さんが床下へ入られた後に、お客様と点検口から覗いてみました。

「こんなスペースに入っていくのですね、自分ではさすがに確認できませんね。」

といった話をしながら、清水さんが戻ってくるのを待ちました。

床下の様子

この写真では分かりにくいですが、清水さんが這って進んでいる様子を点検口より覗き込んでみたところです。かなり狭いスペースですが、今回の物件ではほとんどの床下の状態を見られた様子でした。

お部屋内に傾きもあったため、床下の状態も気にして確認されましたが、床下の状態は築年数(30年弱)にしては良い状態であるとのことでした。

床下調査の説明

上の写真はお客様が直接確認できない個所については、撮ってきた写真を見て頂いて説明をしているところです。

住宅診断(ホームインスペクション)の総括

住宅診断(ホームインスペクション)の総括としては、築年数に相当する程度の劣化はありましたが、お部屋の傾きを除いては大きな問題はございませんでした。ただ、この傾きが大きく、清水さんからの見解もお伝えしたうえで、購入するかどうかはお客様の判断によるところである旨のご説明をしました。

傾きの原因が地盤沈下による可能性は高いものの、床下の状態は良く、傾き以外での大きな不具合はでていない、ただ体でも感じるほどの傾きなのでどうとらえるかとの話でした。

お客様も傾きがあることはご存じだったようですが、仲介業者からは、ここまでの傾きであるとは聞いておられなかったようで、傾きをどう補修されるかについて、悩まれている様子でした。傾きの是正方法等もアドバイスもしながら診断を終えましたが、傾斜を計測して状況を把握することが大事だとわかる事例でした。

今回の中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)の同行を終えて、第三者による住宅診断の重要性を改めて実感することになりました。

また、今回はすでにリフォームをお考え中だったこともあり、診断中にリフォームに関連するご質問を多くいただきましたが、担当者にわかる範囲でいろいろな回答、アドバイスを行いました。

せっかくの機会ですので、中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)をお考えの方には、ぜひ現地でもご不明点やご不安点は担当者へ直接ご質問をいただきたいと思った次第です。

また、診断後にご質問があってもメールやお電話にてアドバイス等は可能ですので、ご利用いただきたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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